中国はメモリを自給自足できるのか:調査会社の分析資料から読み解く(2/2 ページ)
中国が世界のメモリ市場の主要プレイヤーを目指していることは公然の事実だ。本記事では、その実現には何が必要で、中国の参入は市場にどのような影響を与えるかを考察する。
中国にとっての障壁は“経験不足”
Handy氏は、「中国の成長を阻害する障壁になり得るのは、資金不足ではなく、経験不足だ。製造能力の観点から見ると、中国には高度な知識がないため、学ぶべきことが山積みである。中国は、急いで追い付くために人材を獲得しようと、特に台湾や韓国の人材に高額な給料を提示しているようだ。しかしこうした人々は、これまでチームの一員として仕事をした経験がないため、中国が何かを迅速に実現しようとする上で、困難を生じさせる要因になり得る」と述べている。
また、同氏はレポートの中で、「中国が急成長を遂げた時期は、DRAMやフラッシュメモリの価格が、過剰供給のために下落した時期と重なっている。中国のメモリ市場参入は、過剰供給の発生要因にはならないが、低価格の期間は延びるだろう。過剰供給の期間が長くなると、DRAM市場における企業統合がさらに進むとみられるが、たとえ中国が市場に参入しなかったとしても、どのみち企業統合は進められていたはずだ。NANDフラッシュ市場では、中国の市場参入が企業統合を促進する要因にはならないだろう」と述べている。
また同氏は、「この他にも中国にとっては、国内での技術開発や特許法における相違点などが障壁となる可能性がある」と続ける。「発展途上にある経済は通常、製造分野に参入することで、コスト面だけで競争を繰り広げようとするため、知的所有権やロイヤリティーについては、最低価格を実現する上での重荷にしかならないと考える。つまり、なんとかロイヤリティーを支払わずに済ませたいということだ。こうした国々では、特許法があまりうまく機能していない場合が多いため、この先苦い教訓を学ぶことになるだろう」と述べている。
Objective Analysisは120ページに及ぶレポートの中で、中国のメモリ市場に対する野心に影響を及ぼすであろう要素として、例えば、中国国内の他の業界における投資との比較や、韓国や日本などの他の国が市場参入を開始した時の方法など、深く掘り下げて調査を行っている。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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