大容量と高耐圧を武器に幅広く普及するフィルムコンデンサ:福田昭のデバイス通信(225) 2019年度版実装技術ロードマップ(35)(2/2 ページ)
今回はフィルムコンデンサを解説する。フィルムコンデンサの特性は、誘電体として使われるプラスチック材料によってかなり異なる。代表的な4つの材料を紹介しよう。
4種類の誘電体フィルムを要求特性に応じて使い分ける
フィルムコンデンサの誘電体に使われる代表的な材料は4つ。PET(ポリエチレン・テレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PPS(ポリフェニレン・サルファイド)、PEN(ポリエチレン・ナフタレート)である。
PETは最もよく使われる材料であり、フィルムコンデンサの中では価格が最も低い。ただし耐圧は低く、誘電損失が大きい。「ポリエステルコンデンサ」あるいは「ポリエステルフィルムコンデンサ」と呼ばれることが多い。
PPは誘電損失が小さく、交流耐圧が高い。このため低損失品や高耐圧品などに使われる。ただし、耐熱性に劣る。
耐熱性に優れるのがPPSとPENである。PPSは温度特性にも優れており、広い温度範囲で一定の静電容量を要求する用途に適する。ただし価格は高い。PENは価格がPPSよりも低いものの、温度特性で劣ることと、誘電損失が大きいという弱点がある。
電子機器用、電気機器用、自動車・産業機器用などを用意
フィルムコンデンサは、応用分野ごと、さらには回路ごとに特性を調整した製品が用意されている。応用分野には電子機器用、電気機器用、自動車・産業機器用などがある。
電子機器用フィルムコンデンサは、オーディオ(音響)回路やインバータ回路、高周波電源回路、高周波大電流・高電圧回路、高密度表面実装回路などに使われる。電気機器用フィルムコンデンサが使われる回路には、コンプレッサ回路やモーター運転回路などがある。自動車・産業機器用フィルムコンデンサは、ハイブリッド自動車の電源回路、電気自動車の電源回路、太陽光・風力発電の電力変換回路、産業用電源回路などに使われる。
(次回に続く)
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