静電気放電から電子回路を守るESDサプレッサ:福田昭のデバイス通信(234) 2019年度版実装技術ロードマップ(44)(2/2 ページ)
今回は、ESD対策に特化した電子部品「ESDサプレッサ」の概要を解説する。バリスタとの違いや、主な仕様を取り上げる。
ピーク電圧、クランプ電圧、ESD耐量、静電容量
ESDサプレッサの基本特性を表す仕様には、「ピーク電圧(トリガー電圧)」「クランプ電圧」「ESD耐量」「静電容量(入力容量)」などがある。
「ピーク電圧」は、ESDを模擬した放電を印加したときにESDサプレッサの両端に現れる電圧のピーク値である。例えば8kVの帯電電圧による放電を印加すると、数百Vのピーク電圧が生じる。
「クランプ電圧」は、電圧波形のピークが生じてから30ナノ秒後の電圧である。例えばば8kVの帯電電圧による放電を印加すると、クランプ電圧は数十Vとなる。
「ESD耐量」は、通電電流(リーク電流)が10μA以下を維持できる帯電電圧である。8kV、15kV、30kVといった高い帯電電圧の静電気放電を印加して測る。
「静電容量(入力容量)」はESDサプレッサをコンデンサとみなしたときの容量である。周波数が1MHzのときの容量で規定することが多い。
最近の製品動向としては、車載用に対応する使用温度範囲の拡大やESD耐量の高電圧化などがある。例えばリテルヒューズは車載用電子部品規格「AEC-Q200」に準拠しつつESD耐量を最大30kVと高めたESDサプレッサ「AXGDシリーズ」を2017年8月20日に製品発表した。使用温度範囲はマイナス65℃〜プラス125℃と広い。外形寸法が1.6mm×0.8mm(JEDEC規格の0603サイズ)の「AXGD10603」と1.0mm×0.5mm(JEDEC規格の0402サイズ)の「AXGD10402」がある。
(次回に続く)
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