Arm、半導体の新興企業にIPアクセスを無償提供へ:「Cortex-A/R/M」や「Mali」も(2/2 ページ)
Armは2020年4月30日、2019年6月に発表した「Arm Flexible Access」プログラムを拡充し、半導体関連の新興企業向けに初期ライセンスを無償で提供してサポートする新しいイニシアチブ「Arm Flexible Access for Startups」を発表した。調達資金が500万米ドル未満の新興企業を対象として、Armの最も重要な一部のIP(Intellectual Property)へのアクセスを、初期コストゼロで提供するという。
RISC-Vに対する“防衛的措置”の意味合いも?
Arm Flexible Accessプログラムには、オープンソースのISA(命令セットアーキテクチャ)であるRISC-Vとの競争を一部回避する手段としての“防御的な”要素もある。EE TimesはMcGregor氏に、「Arm Flexible Access for Startupsは、オープンアーキテクチャという選択肢の魅力を上回ることができそうか」と尋ねてみた。
これに対し同氏は、「どちらとも言えない。もし企業が、コストとリスクを可能な限り最小限に抑えることで迅速な市場投入を目指す場合には、オープンアーキテクチャはあり得る。しかし、自社独自の要件に準拠した専用のプロセッシングソリューションを必要とする場合は、オープンアーキテクチャを選択する可能性は低くなる。このため、現在はまだどちらも選択の余地がある」と述べる。
Burr氏は、「顧客企業にとっては、ポートフォリオは幅広い方が良い。ある新興企業は、『お菓子屋さんにいる子どものような気分になれる』」と例えていた」と述べている。
その企業は、全部ではなく一部の最新プロセッサ技術を予約しているという。Burr氏は、「現実問題として、この最先端IPには、最新技術と膨大なコストを要するファウンドリーの製造能力が不可欠であるため、ごく初期の段階にある新興企業にとっては、どのみち魅力的ではないといえる」と述べる。
同氏は、「Armの委託による調査レポートによると、新興企業は近年、膨大な量の活動を進めているということが明らかになった。その資金調達額は、2016年から2019年にかけて10倍に増大している」と指摘する。米国の市場調査会社であるSemico Researchによると、半導体関連の新興企業が過去5年間に調達した資金総額は、13億米ドルを超えるという。
その大半を占めるのが、エッジAI(人工知能)、自動運転車、IoTの分野で現在台頭しているさまざまなユースケースだ。この3分野はいずれもArmがターゲットに定めている市場であり、全体をほぼ均等に3分割しているという状況にある。
またArmは、「Arm Flexible Access for Startups導入の一環として、Silicon Catalystと戦略的提携を結んだ。Silicon Catalystは、半導体ソリューション開発の迅速化を目指す新興企業へのサポート提供を専業とするインキュベーターだ。Silicon Catalystの投資企業は、Arm IPやEDAツール、試作シリコンなどに無償でアクセスできるため、ビジネスの重大な局面で大幅なコスト削減を実現することが可能だ」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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