東京大ら、極端紫外光を集め微細加工に成功:高精度回転楕円ミラーを独自開発
東京大学らによる研究グループは、フェムト秒レーザー光の高次高調波として極端紫外光を発生させ、これを集めることでサブマイクロメートルレベルの微細加工を実現した。
PMMA薄膜内の結晶構造が加工によって変化
東京大学らによる研究グループは2020年5月、フェムト秒レーザー光の高次高調波として極端紫外光を発生させ、これを集めることでサブマイクロメートルレベルの微細加工を実現したと発表した。
今回の研究成果は、東京大学大学院理学系研究科化学専攻の山内薫教授や岩崎純史教授、本山央人助教、大学院工学系研究科附属光量子科学研究センターの坂上和之主幹研究員、同精密工学専攻の三村秀和准教授、量子科学技術研究開発機構量子ビーム科学部門関西光科学研究所の石野雅彦主幹研究員、宇都宮大学工学部の東口武史教授および、産業技術総合研究所先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ(分析計測標準研究部門を兼務)の黒田隆之助ラボチーム長らによるものである。
極端紫外光(波長10〜100nm)は、微細加工に適した光源として注目されている。ところが、回折限界にまで集めて試料へ照射するためには、面精度が極めて高い反射光学素子を必要とするなど、実用面では課題もあった。
研究グループは今回、高精度の集光ミラー「回転楕円(だえん)ミラー」を独自に開発し、従来の課題を解決した。具体的には、近赤外フェムト秒レーザーパルスをアルゴンガスに集めて、極端紫外波長域の高次高調波光(27.2〜34.3nm)を発生させた。そして回転楕円ミラーを用い、発生させた高次高調波光を1.48×0.79μm(半値全幅)まで集光。これをアクリル樹脂(PMMA)薄膜および、金属ナノ粒子レジスト薄膜に照射したところ、サブマイクロメートルレベレで加工することに成功した。
高次高調波を照射した後に、原子間力顕微鏡(AFM)で照射穴の形状などを観測した結果、0.67×0.44μm(半値全幅)の微細な穴を加工できていることが分かった。
PMMA薄膜と金属ナノ粒子レジスト薄膜における表面加工レートと照射強度の関係も調べた。この結果、照射強度が高まるにつれ、蒸発(エバポレーション)領域から加工(アブレーション)領域に移行することが分かった。
実験によれば、200ショット照射した時、加工領域に達する照射強度のしきい値は、PMMA薄膜が0.42mJ/cm2、金属ナノ粒子レジスト薄膜が0.17mJ/cm2となった。また、PMMA薄膜では照射強度のしきい値を14.0mJ/cm2とした場合、1ショットで加工できることが分かった。さらに、PMMA薄膜にできた加工痕を顕微ラマン分光法で観察したところ、PMMA薄膜内のポリマー主鎖が切断されることも明らかになった。
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