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東京大ら、ダメージを抑え有機半導体上に電極形成「洗濯のり」をヒントに開発

東京大学らの研究グループは、基板上に形成された微細な電極のパターンを引きはがして、有機半導体に取り付ける手法を開発した。

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安価で汎用性が高い、2種類の高分子を使用

 東京大学らの研究グループは2020年3月、基板上に形成された微細な電極のパターンを引きはがして、有機半導体に取り付ける手法を開発したと発表した。この手法は「洗濯のり」にヒントを得て開発したという。

 今回の成果は、東京大学大学院新領域創成科学研究科、同マテリアルイノベーション研究センター、産業技術総合研究所 産総研・東大 先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ、物質・材料研究機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(WPI-MANA)らの共同研究によるものである。

 有機半導体は、従来のシリコン半導体に比べ軽量で柔軟性に優れ、低温プロセスで印刷できるためコストダウンが期待できるなど、さまざまな特長を備えている。一方で、溶剤や熱によるダメージを受けやすいという課題があった。このため、有機電界効果トランジスタ(OFET)製造工程で、有機半導体上に電極を形成する時は、ダメージを抑える工夫が必要であった。

 この対策として、事前に電極を別の基板上に作製しておき、この電極を剥がして半導体上に移す方法などが検討されてきた。しかし、これまでの方法では電極と半導体の接合強度を十分に確保することが難しかったという。

 こうした中で共同研究グループは、洗濯のりの成分である「ポリビニルアルコール(PVA)」が、「乾燥すると固まり、水にあうと簡単に溶ける」という特性に注目した。今回は、アクリル樹脂の一種である「ポリメタクリル酸メチル(PMMA)」とポリビニルアルコールという、安価で広く用いられている2種類の高分子を用いた。

 具体的には、まず基板上に電極材料をパターニング、その上にPMMAを塗布した。これらの膜厚は数10〜100nmと薄く、取り扱いが極めて難しい。このため、この上からPVAを20〜30μmの膜厚で塗り乾燥させた。その後、電極とPMMAおよびPVAを一括して基板から引き剥がし、取り扱いが容易な電極フィルムとした。


上図は有機半導体膜上へ電極を転写する手法の模式図。下図はデバイスの断面図 (クリックで拡大) 出典:東京大学他

 さらに、基板から剥がした電極フィルムを半導体上に貼り付け、PVAを温水で溶解し除去した。こうすることで、薄い電極とPMMAが静電気により半導体上に吸着されるという。この方法により、1μmでパターニングをされた電極が途中で伸縮することなく、半導体上に取り付けられることが分かった。


左図は作製した電極フィルムの写真。右図は半導体膜上へ転写する前後の電極(走査型電子顕微鏡像) 出典:東京大学他

 研究グループは、開発した手法を用い、1分子層(厚さ4nm)の単結晶からなる有機半導体の上に電極を取り付けたOFETを試作し、その特性を評価した。この結果、ゲート電圧を変化させるとドレイン電流が流れ、有機半導体本来の値を示すことが分かった。これらの測定結果から、算出した移動度は約10cm2/Vsとなり、実用レベルに達していることを実証した。


作製したOFETの飽和領域における伝達特性(実線)と従来の真空蒸着法で電極を作製したOFETの伝達特性(橙色破線) 出典:東京大学他

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