Armの新IP、効率を20%向上した「Cortex-A78」など:CPUのカスタマイズプログラムも発表(2/2 ページ)
Armは2020年5月27日、オンラインで記者説明会を開催。次世代モバイルデバイス向けの新CPU IP「Cortex-A78」やGPU IP「Mali-G78」、NPU IP「Ethos-N78」および、Arm Cortex CPUのカスタマイズに対応する新プログラムを発表した。
最大24コアサポートの「Mali-G78」
「Mali-G78」は、前世代のMali-G77に続いてValhallアーキテクチャを採用。コア数をMali-G77の最大16コアから最大24コアに拡大したほか、増加したコアを効率的に稼働させる非同期トップレベルの採用やタイル処理部の強化、フラグメント依存性トラッキングの向上などによって、Mali-G77から性能を25%向上した。「通常のスマホでは実現できないような」没入感あるデジタル体験に求められるグラフィック性能を発揮するとしている。ピーク性能における処理性能が高くなったことから、低消費電力化も実現。さらにNPUを搭載しないデバイスでの利用も考慮し、機械学習(ML)性能も15%向上しているという。
同社はMali-G78の性能について、ゲーム内で煙や草原、木の枝などの複雑な描写における性能比較を実施。実際のゲーム複数タイトルを用いて比較した結果、Mali-G77から6〜17%の性能向上が確認できたという。なお、同社は今回、ゲーム開発者向けに、プログラム内のボトルネックを抽出、可視化することで継続的な統合と開発ワークフローの高速化を実現するツール「Performance Advisor」の提供を行うことも明かした。
また、同社は新たに、Mali-G78と同機能を備えつつ1〜6コアまでの対応としたミッドレンジ向けGPU IP「Mali-G68」も発表。Mali-G78は7〜24コアまでの対応であり、「同じコンフィギュレーションで、1コアから24コアまでシームレスなサポートが可能になった」としている。
「LSI内に、適材適所でちりばめる」を最適解とした「Ethos-N78」
「Ethos-N78」は、前世代のEthos-N77からピーク性能2倍、効率25%向上などを実現しているが、最大の特長は、490以上のコンフィギュレーション数とメモリ帯域の低減だという。
NPUの用途は音声認識や画像処理、オーディオ処理などさまざまだが、データフローの順番も異なるうえ、各用途、デバイスによって求められる処理能力も変わってくる。同社は、「それらを包括したML用のNPUが1つであるべきでない。適材適所で1つのLSIの中に複数ちりばめて存在させることが最適解ではないか」とし、その思想に基づいた第1弾のNPUとして、Ethos-N78を開発したとしている。
Ethos-N78は、90以上のコンフィギュレーションから、求められる処理やアプリケーションに併せて複数選択しLSIに実装することで、最適化を実現。これによって、メモリ帯域も40%向上したという。Ethos-N78は、1TOP/秒〜最大10TOP/秒までの構成が用意されている。
同社は、「Cortex-Aのパフォーマンスと低消費電力と新しいカスタムプログラムによって、新しい市場やカスタムに特化した市場をサポートする。さらにはNPU、GPUによってグラフィックやAI(人工知能)を下支えし、パートナーとともにデジタルイマ―ジョンの中で最先端に立っていきたい」としている。
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