京セミが光半導体の製造能力強化、工場のIoT化も:5G需要増で引き合い多く(2/2 ページ)
京都セミコンダクターは2020年6月9日、札幌市で記者説明会を開催し、同社の概要や中期戦略計画などを紹介した。
10億円を投資して製造開発拠点を拡張
京都セミコンダクターの2020年3月期の売上高は31.9億円。高橋氏は中期戦略として、売上高10%増、営業利益率10%以上を目指す「10+10+(10プラス10プラス)」を発表した。ただし、期間は明らかにしていない。なお、今期の見通しについては、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響で、特に自動車向け産業機械で投資が落ち込んでいるが、5G関連の投資が好調で需要が大幅に増加していることから、産業機械の落ち込みを相殺できている」と語り、“コロナショック”でも堅調だと述べた。
中期戦略の一環として、製造および開発拠点の一つである恵庭事業所(北海道恵庭市)に、10億円を投資して光デバイス製造開発センターを建設する。同センターの敷地面積は約5500m2で、クリーンルームは620m2。完成後は恵庭事業所全体で月産約250万個の生産能力となる予定だ。高橋氏によると、2020年末までに建屋が完成し、2021年1月から生産を開始する予定だという。「雇用についても、規模は言えないが北海道の人材を積極的に採用する予定だ」(高橋氏)
工場のIoT化を進める
その他、京都セミコンダクターは既存の工場でIoT化を進めるなど、拡張以外にも積極的に投資している。光半導体デバイスの製造は、プロセッサやメモリなどのシリコンデバイスとは異なり、先端のプロセスや設備を使用しているわけではない。「使用するウエハーは2インチが一般的で4インチだと“大口径”の世界。シリコンで考えると30年前の装置で製造している」と高橋氏は語る。「古い装置でも高品質を維持しつつ高い歩留まりで製造するため、工場のIoT化を進めている。温湿度センサーやガス流量センサーなど各種センサーを装置や工場に取り付け、クラウドサービスのSaaS(Software as a Service)を利用して装置稼働状態や計画の進捗などをリアルタイムでモニタリングしている」(同氏)
コロナ対策は?
高橋氏は、COVID-19に対するBCP(事業継続計画)についても触れた。京都セミコンダクターでは2020年4月1日にBCPタスクフォースを立ち上げ、翌日の4月2日から即座に適応した。在宅勤務や時差出勤の勤務体制を整え、緊急事態宣言中はシフト制とし、出勤する従業員の数を通常の20%以下に減らした。現在は、これを50%に緩和している。製造についても、作業人員を分散したり、透明のビニールカーテンで空気の流れを制御したりして、「3密」を避ける工夫を導入している。
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