世界半導体市場、2020年は3.3%プラス成長と予測:メモリ市況回復がけん引
WSTS(World Semiconductor Trade Statistics:世界半導体市場統計)は2020年6月9日、2020年春季の世界半導体市場予測を発表した。それによると、2020年の世界半導体市場は、メモリ市況の回復によって前年度比3.3%増となるという。さらに、2021年も同6.2%増となると予測。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって先行きが不透明な状況であるものの、2年連続のプラス成長を見込む結果となっている。
WSTS(World Semiconductor Trade Statistics:世界半導体市場統計)は2020年6月9日、2020年春季の世界半導体市場予測を発表した。それによると、2020年の世界半導体市場は、メモリ市況の回復によって前年度比3.3%増となるという。さらに、2021年も同6.2%増となると予測。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって先行きが不透明な状況であるものの、2年連続のプラス成長を見込む結果となっている。
この予測は2020年3月までの実績値を基にしている。なお、WSTSの市場予測は通常、加盟会社がWSTS半導体市場統計を参照して作成した予測値を基に予測会議を実施し、マクロ経済や主要電子機器の動向などを参考にしつつ検討を加え作成しているが、今回はCOVID-19の影響から予測会議が中止となりこのプロセスを踏んでいない。発表した予測値は、加盟各社の成長率予測の平均値を基に作成されているという。
コロナ影響も、在宅勤務や巣ごもり需要が下支え
WSTSによると、2019年の世界半導体市場は、米中貿易摩擦などの影響から前年度比12.0%減の4123億700万米ドルとなったという。2020年はこの市場低迷からの反発で年初から回復基調にあったが、COVID-19のパンデミックを背景に世界的に経済活動が停滞し、マイナス影響を及ぼす形となっている。そうした中、前年比3.3%増の4259億6600億米ドルという予測結果となったことについて、WSTSは、「先行きは依然不透明であるものの、感染対策として世界各国で導入が進んだ在宅勤務や、巣籠り需要の増加などライフスタイルの変化による恩恵を受ける分野もあり、それらが下支えすると考えられる」としている。なお、このプラス成長はメモリ市況回復による影響が大きく、メモリを除いた市場でみると、同0.7%減のマイナス成長になるという。
また、前年比6.2%増の4522億5200万米ドルという予測結果となった2021年については、「COVID-19を巡る状況は現段階では引き続き不透明なものの、一定程度状況が改善するという前提の下、世界経済も回復に転じるとみて半導体市場も成長が加速する予測となったと考えられる」としている。
ただ、日本市場に限ると、2019年の半導体市場は前年比11.2%減の約3兆9187億円となったが、2020年はここからさらに4.2%減の3兆7535億円と、2年連続のマイナス成長を記録することを予測している。なお、2021年には同3.3%増の3兆8787億円になると予測している。
前年比15.0%増、メモリの回復が大きく貢献
2020年世界半導体市場について、製品別では、ディスクリートが前年比6.6%減の223億900万米ドル、オプトエレクトロニクスは同5.1%減の394億4100万米ドル、センサーは同2.1%減の市場規模132億3000万米ドルとそれぞれ減少することを予測している。これに対して、ICではメモリが前年比15.0%増と大きく回復。アナログは同5.8%減となるものの、ロジックが同2.9%増、マイクロが同2.6%増と伸び、結果としてIC全体で同5.3%増の3509億8600万米ドルにまで回復すると予測している。
さらに2021年には、ディスクリートが前年比5.7%増の235億7600万米ドル、オプトエレクトロニクスが同6.1%増の418億5000万米ドル、センサーが同4.6%増の138億3900万米ドル、IC全体も同6.3%増の3729億8700万米ドルと、全ての製品がプラス成長となることを予測している。
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