Intel、3D積層技術Foveros採用の「Lakefield」を発表:スタンバイ消費電力は91%減に
Intelは2020年6月10日(米国時間)、10nmプロセスを採用した同社のノートPC向けSoC(System on Chip)「Lakefield(開発コード名)」として「Intel Core processors with Intel Hybrid Technology」を発表した。
新しい3Dパッケージング技術を初めて採用
Intelは2020年6月10日(米国時間)、10nmプロセスを採用した同社のノートPC向けSoC(System on Chip)「Lakefield(開発コード名)」として「Intel Core processors with Intel Hybrid Technology」(以下、Lakefield)を発表した。
Intelの新しい3D(3次元)パッケージング技術である「Foveros」を採用した初のプロセッサとなる。さらに、処理能力の高い「Sunny Cove」コアと、電力効率の高い「Tremont」コアを搭載するハイブリッド型のx86アーキテクチャを採用した。この2つにより、12×12×1mmと小型で、スタンバイ消費電力を2.5mWと既存品に比べて約90%もの大幅な削減に成功したチップとなっている。
FoverosはIntelが2018年12月に同社のイベント「Architecture Day」で発表した技術で、単一ダイ、特にCPUとGPUといったロジックダイを積層できることが特長だ。同イベントでは、「Intelの22nmプロセス(P1222)SoC、10nmプロセス(P1274)のコンピュートダイ、メモリをFoverosを使って積層し、12×12×1mmのパッケージに収めたチップ」が披露されているが、今回発表したLakefieldは、これがそのまま製品化されたようなイメージになっている。
最下層はP1222 SoCで、ISH(Intel Sensor Hub)ドライバー、PCI Express(PCIe) Gen 3やUSB 3.1、I3C/I2C/SPIなどが集積されている。その上には、CPU、GPU、ディスプレイコントローラー、メモリコントローラーなどを搭載したコンピュートダイが、そしてその上にメモリが積層されている。
Foverosを採用することで、LakefieldのSKU(Stock Keeping Unit)の1つである「Core i5-16G7」は、第8世代の「Intel Core i7-8500Y」プロセッサに比べてパッケージサイズが56%小さくなり、基板サイズは47%削減できるという。
コンピュートダイのCPUには、1個のSunny Coveコアと4個のTremontコアを搭載。OSのスケジューラによって、適切なアプリケーションを適切なコアに割り当てることで処理能力と電力効率の向上を図っている。
SoCとコンピュートダイに搭載されている機能。なお、Wi-Fi 6に対応するには、図版にある通り「Intel Wi-Fi 6 AX200」モジュールなどを追加する必要がある 出典:Intel(クリックで拡大)
Foverosとハイブリッドアーキテクチャを採用することで、Lakefieldは、スタンバイ消費電力を2.5mWにまで抑えることに成功した。Core i5-16G7とCore i7-8500Yで比較すると、91%低減されている。同様に、電力効率は最大24%向上し、シングルスレッド性能は最大12%向上した。
今回発表したLakefieldは、Samsung Electronicsの「Galaxy Book S」(2020年6月に発売予定)とLenovoの「ThinkPad X1 Fold」(2020年後半に発売予定)に搭載される。
現時点のSKUとしては、Core i5-16G7と「Core i3-13G4」の2種類を用意している。
IntelのClient Computing Groupでプロダクトディレクターを務めるRam Naik氏は、日本時間の2020年6月11日に行われたオンラインの記者説明会で、「FoverosとハイブリッドCPUアーキテクチャによって、LakefieldはノートPCの将来を変えるだろう」と強調した。
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