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次世代UWB技術、高精度かつ大幅な低消費電力化を実現デジタルRFと機械学習を用いた新技術(2/2 ページ)

ベルギーの研究機関imecは2020年5月下旬、デジタルRFと機械学習(ML)を活用し、消費電力を従来の10分の1に削減しながら、厳しい環境下でも10cm未満の高精度な測距を実現する次世代超広帯域無線(UWB:Ultra Wide Band)技術を開発した、と発表した。

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ML活用し厳環境下での高精度測距を実現

 ハードウェアの開発を補完するためにIDLab(ゲント大学のimec研究グループ)の研究者が実現したのは、厳しい環境下でのUWBの無線測距性能を大幅に向上させるソフトウェアベースの機能強化だ。

 特に工場や倉庫など、人や機械が常に動き回り金属製の障害物がある場所では大きな反射が発生し、UWBのローカリゼーションと距離測定に影響を与える。IDLabは、MLを利用し、UWBアンカーと追跡するモバイル機器との間の見通し外環境を検出する、スマートアンカー選択アルゴリズムを作成した。この情報をもとに、距離測定の精度を推定し、測距エラーを修正する。このアプローチには、ネットワークの物理層パラメーターを効果的にチューニングできるようにするML機能も含まれており、例えばアンカーの無線をチューニングするなど、適切なステップで測距エラーを軽減することが可能となる。


障害物や見通しは、UWBのローカリゼーションや距離測定に影響を与える可能性があり。オンチップMLでは、この例のようにエラーを修正することができる (クリックで拡大)出典:imec

 IDLabの教授、Eli De Poorter氏は、「われわれは非常に困難な産業環境において、UWB測距精度が10cm以下であることを既に実証している。これは、既存のアプローチと比較して2倍以上の精度向上となる。さらに、UWBローカリゼーションのユースケースは一般的に受注生産され、マニュアル設定に依存することが多いのに対し、われわれのスマートアンカー選択ソフトウェアは、アプリケーション層で実行されるため、どのようなシナリオでも動作ができる」と説明している。

 このような適応性ある構成によって、次世代の低消費電力、高精度UWBチップは、小型でプライバシーに配慮した機器を利用した伝染病の接触追跡の改善など、幅広い応用が可能となる。

 実際にimecは既にそのスピンオフ企業Loposに同技術をライセンスしている。Loposは、従業員同士が規定の距離以上接近した際に音声や触覚によるアラームを発信し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下で求められる『社会的距離の維持』を実現するウェアラブル機器をリリースしている。

 BluetoothではなくUWBを選択したLoposのウェアラブル機器「SafedDistance安全距離」は、重さ75gで2〜5日間バッテリーを維持できるスタンドアロンソリューションだ。UWB技術をベースにしており、安全で高精度(誤差15cm以下)の距離測定が可能となっている。2つの機器が近づくと、デバイス間の正確な距離(調整可能)が測定され、設定された安全距離が守られていない場合、アラームが作動する。

 スタンドアロンのため個人情報を記録することもなく、ゲートウェイやサーバなどのインフラも必要ない。Loposは市場の需要に対応するため、この機器の生産を既に開始しており、さまざまな分野で活躍する企業から複数の大型受注を受けている。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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