フォトニック結晶レーザー搭載のLiDARを開発:高ビーム品質で外部レンズ系不要(2/2 ページ)
京都大学の研究グループは北陽電機と共同で、フォトニック結晶レーザーを搭載した光測距システム(LiDAR)の開発に成功した。自動運転を目指す自動車や建設機械などの用途に提案していく。
ブロードエリア半導体レーザーと比較
さらに、フォトニック結晶レーザーと一般的なブロードエリア半導体レーザーを搭載したLiDARシステムをそれぞれ製作し、遠方でのビームスポットを比較した。フォトニック結晶レーザー搭載のLiDARシステムは、レンズなしでもビームの広がりが小さく、高い分解能が得られた。これに対し、ブロードエリア半導体レーザー搭載のLiDARシステムは、ビームの広がりが大きく、分解能が低下した。
フォトニック結晶レーザー搭載のLiDARシステムを用い、リアルタイムで人物測距の実験も行った。この結果、2人の動作や移動する様子などを詳細に捉えられることを確認、フォトニック結晶レーザーの有効性を示した。
光出力の増大も可能
今回は、フォトニック結晶レーザーの光出力をさらに増大するための可能性も検討した。発振面積を直径1mmに拡大し、2重格子フォトニック結晶の構造も、空孔の形状に加えて、その距離も精密に制御した。この結果、最大70Wのピーク出力で、高いビーム品質の動作を実現した。これは100mを超える光測距が可能になる値だという。
今回の実験では、フォトニック結晶レーザーから出てきたビームを、機械式ミラーで走査した。今後、電気的に2次元ビーム走査可能なフォトニック結晶レーザーの開発にも取り組む予定である。
なお、LiDARに搭載可能なフォトニック結晶レーザーは、京都大学光・電子理工学教育研究センター内に設置された光・量子拠点より、MTA(Material Transfer Agreement)を介して、第三者にも提供するという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 京都大ら、集積可能な「量子もつれ」光源を実現
京都大学は、集積化が可能な「量子もつれ」光源を実現した。光源をチップ化することで小型化が可能となり、量子コンピュータや量子暗号、量子センシングなどへの応用が期待される。 - 京都大ら、THz帯でスピンポンピング効果を実証
京都大学らの共同研究グループは、テラヘルツ(THz)帯の反強磁性共鳴によるスピンポンピング効果を実証した。この現象がTHz帯の磁化ダイナミクスを有する反強磁性体で観測されるのは初めてという。 - 超伝導体テラヘルツ光源の同期現象を観測
筑波大学数理物質系の辻本学助教らは、超伝導体テラヘルツ光源の同期現象を観測することに成功した。テラヘルツ波を用いた量子通信デバイスの開発などにつながるとみられている。 - 単一NVダイヤモンド量子センサーで最高感度実現
京都大学化学研究所と産業技術総合研究所の研究グループは、人工合成したリンドープn型ダイヤモンドを用い、室温で世界最長となるNV(窒素−空孔)中心の電子スピンコヒーレンス時間を達成するとともに、単一NV中心を用いた量子センサーで世界最高の磁場感度を実現した。 - 5G、AIが「がん治療」を変える!? 山中教授らが語る未来
楽天は2019年8月2日、同社のイベント「Rakuten OPTIMISM 2019」(パシフィコ横浜/2019年7月31日〜8月3日)で、医療最前線:がん治療の革命児たち」と題したパネルディスカッションを実施。京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥氏ら、がん治療のスペシャリストが、AIや5G(第5世代移動通信)などの最新テクノロジーが医療にもたらす可能性について語った。 - インク使わず、北斎の浮世絵をフルカラーで印刷
京都大学のシバニア・イーサン教授と伊藤真陽特定助教らの研究グループは、インクを全く使わずに、葛飾北斎が描いた絵画「神奈川沖浪裏」を、フルカラーで作製した。その大きさはわずか1mmサイズである。