東京大ら、フルカラーのスキンディスプレイ開発:手の甲などへの情報表示が可能に
東京大学の研究チームと大日本印刷は、薄型で伸縮自在の「フルカラースキンディスプレイ」を開発した。手の甲に直接貼り付けることができ、表示内容はBluetooth Low Energyを介し外部から制御することが可能である。
表示部と駆動回路、通信回路、電源などを一体化
東京大学の染谷隆夫博士らによる研究チームと大日本印刷(DNP)は2020年7月、薄型で伸縮自在の「フルカラースキンディスプレイ」を開発したと発表した。手の甲に直接貼り付けることができ、表示する内容はBLE(Bluetooth Low Energy)を介し外部から制御することが可能である。
東京大学とDNPの共同研究チームはこれまで、伸縮性あるデバイスの開発に向けて、「伸縮性ハイブリッド電子実装技術」などの研究を行ってきた。この実装技術の有用性を確認するため、12×12(144)個のカラーLEDと伸縮性ある配線を、薄いゴムシートに埋め込んだスキンディスプレイを開発した。
表示デバイスは、9000色以上の色表現ができるフルカラーのスキンディスプレイとその駆動回路、通信回路および、電源などを一体化している。全体の厚みは約2mm。130%までの伸縮を繰り返しても電気的、機械的特性が損なわれることはないという。表示部の駆動電圧は3.7Vで、表示速度は60Hz、最大消費電力は平均100mWである。ELを用いた従来の伸縮性ディスプレイと比べても、大気安定性や機械的耐久性に優れているという。
伸縮自在のディスプレイを皮膚に直接貼り付け、人の動きに追従させた状態で100個以上のLEDが全て正常に動作しフルカラー動画を表示できたのは今回が初めてだという。また、配線材料には銅を採用している。量産性に優れた方法で製造できるため、早期実用化と低コスト化が可能とみている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 東京大ら、SnS単層を初合成し強誘電特性を実証
東京大学らの研究グループは、硫化スズ(SnS)単層の合成に初めて成功し、その強誘電特性を実証した。半導体メモリやナノ発電向け材料として期待される。 - 有機半導体の分子形状を物理吸着で一斉に制御
東京大学や東北大学らの共同研究グループは、有機半導体単結晶の基板界面における分子形状を0.1nmの精度で決定することに成功した。この結果、有機半導体を基板に物理吸着することで、100兆個を超える分子の形状が同じように変化することが明らかとなった。 - 東京大学ら、トポロジカル状態変化の現象を発見
東京大学は2020年5月、広島大学や大阪大学らのグループと共同で、電荷密度波を形成する「VTe2」の電子構造を解明し、トポロジカルな性質が変化する現象を発見した。 - 東京大ら、ダメージを抑え有機半導体上に電極形成
東京大学らの研究グループは、基板上に形成された微細な電極のパターンを引きはがして、有機半導体に取り付ける手法を開発した。 - 5G向けに「透明アンテナフィルム」を開発、DNP
大日本印刷(DNP)は、5G(第5世代移動通信)に対応した透明アンテナフィルムを開発したと発表した。2022年度に量産を開始し、2025年度に年間100億円の売り上げを目指すとしている。 - ディスプレイ表面のぎらつき現象を正しく評価
大日本印刷(DNP)は、防眩フィルムを貼ったディスプレイ表面のぎらつき現象を、より正確に評価することができる「光学測定原理」を解明した。