半導体産業はコロナに負けない! 製造装置市場の動向を読み解く:湯之上隆のナノフォーカス(28)(4/4 ページ)
コロナ禍にあっても半導体産業は強いようだ。特に半導体の微細化は止まるどころか、むしろ加速しているようにすら見える。今回は、製造装置市場の動向を、過去も含めて読み解いてみたい。
製造装置市場の企業別シェアと今後の展望
最後に、2019年における各種の製造装置の企業別シェアを見てみよう(図6)。韓国のSEMESや中国のNAURAがわずかにシェアを獲得している分野もある。しかし、全ての製造装置について、日米欧の企業がシェアを独占している。
露光装置、コータ・デベロッパ、スパッタ装置、バッチ式洗浄装置、異物検査装置、欠陥検査装置は、「1強+その他」という状況になっている。また、マスク検査装置、CVD装置、熱処理装置、CMP装置、枚葉式洗浄装置では、「2強+その他」になっている。さらに、ドライエッチング装置は、「3強+1社」と言えるかもしれない。
要するに、全ての製造装置について、日米欧の特定の企業が、「1〜3強+その他」という寡占状態をつくり出している。これは、各種の製造装置がノウハウの塊になっているため、容易に新規企業が参入できないことを意味している。中国が、製造装置の国産化を目指しているが、最先端の製造装置を開発するには、相当な時間が必要になるだろう。
では、今後、製造装置の出荷額はどのように推移するだろうか? 過去の歴史から、製造装置の出荷額は、半導体よりも、好況と不況の時の上下動が激しいことが分かった。これからも、「〇〇バブル」や「△△ショック」などが起きるだろう。そして、その都度、製造装置の出荷額は大きく変動するに違いない。
しかし、ロジック半導体の微細化は止まる気配がない。また、DRAMも1nm刻みのスケーリングを続けていく。さらに、3次元NANDの積層数の増大も続くだろう。従って、大きな上下動があるかもしれないが、製造装置の出荷額は増大していくと確信している。少なくとも、コロナ騒動の影響などものともせずに、成長していくに違いない。
筆者プロフィール
湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長
1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。
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