主戦場がサーバに移ったDRAM大競争時代 〜メモリ不況と隣り合わせの危うい舵取り:湯之上隆のナノフォーカス(29)(4/4 ページ)
DRAM産業は、出荷個数が高止まりする新たなステージに突入したと考えられる。そこにはどんな背景があるのか。
またもやIntelのせいか?
最近のIntelには、良くない話が付きまとっている。例えば、IntelのCEOであるBob Swan氏は2020年7月末に行われた2020年第2四半期の決算報告会で、7nmの立ち上げが半年(実質1年?)遅れることを認めた上で、「2022年までに、次世代プロセス技術の社内開発を継続していくのか、またはファウンドリーの活用を拡大していくのかどうかについて、決断を下す予定だ」と語ったという(関連記事:「「Intel Outside」、アウトソースの道を選ぶのか?)。
筆者としては、TSMCに生産委託することになるかもしれない7nmや、いまだ十分立ち上がっているとは言い難い10nmよりも、足元の14nmのMPUに不安を抱く。前掲のTrendForceのMark Liu氏の発表には、IntelとAMDのサーバ用MPUのロードマップのスライドがあった(図10)。
図10:サーバ用MPUのロードマップ 出典:Mark Liu , “The Opportunities and Challenges for Server Supply Chain After Pandemic”, TrendForce主催の2020年6月のWebセミナーの資料(クリックで拡大)
AMDは、2019年第2四半期からTSMCの7nmでコードネーム“Rome”と名付けられたサーバ用MPUの「EPYC」を製造し、リリースしている。2020年第4四半期には、孔系にEUVを使う7nm+でTSMCが製造した「Milan(開発コードネーム)」を発売する予定だ。TSMCでは既に5nmの量産が立ち上がるなど、先端プロセスは順調であり、AMDが原因でMPUの出荷個数が下がることはあり得ないだろう。
となれば、問題はIntelということになる。Intelは、2020年初頭から、「Xeon E」シリーズのサーバ用MPUとして、コードネーム「Comet Lake E」を14nmで製造する計画となっている。しかし、この新しいMPUの歩留まりが上がらないのではないか? その結果として、世界的にMPUの出荷個数が減少しているのではないか?
サーバ用DRAMの増産には注意が必要
X86アーキテクチャのプロセッサの市場シェアは、2020年第3四半期には、Intelが65.8%に対して、AMDが34.2%にまで接近する予測となっている(図11)。今後もIntelがもたつけば、本当にAMDに抜き去られるだろう。
しかし、それ以上に怖いのは、Intelのせいで、世界的なMPU供給不足が一向に改善されず、サーバ用DRAMやNANDが供給過剰となって市場に溢れ、価格暴落を引き起こし、再びメモリ不況に逆戻りすることである。そのようなことを回避するためにも、DRAMメーカー3社は、MPUの出荷個数の動向を注意深く観察しながら、サーバ用DRAMを生産しなくてはならないと言える。
筆者プロフィール
湯之上隆(ゆのがみ たかし)微細加工研究所 所長
1961年生まれ。静岡県出身。京都大学大学院(原子核工学専攻)を修了後、日立製作所入社。以降16年に渡り、中央研究所、半導体事業部、エルピーダメモリ(出向)、半導体先端テクノロジーズ(出向)にて半導体の微細加工技術開発に従事。2000年に京都大学より工学博士取得。現在、微細加工研究所の所長として、半導体・電機産業関係企業のコンサルタントおよびジャーナリストの仕事に従事。著書に『日本「半導体」敗戦』(光文社)、『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)、『日本型モノづくりの敗北 零戦・半導体・テレビ』(文春新書)。
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