幅広い製品群をあらゆる用途へ、SiCパワーICにも注力:Littelfuseジャパン代表 亥子正高氏(2/2 ページ)
1927年の創業以来、ヒューズやポリマーPTC、TVSダイオードといった回路保護素子を手掛けてきた米Littelfuse。同社の日本法人であるLittelfuseジャパンでは2020年4月、それまで取締役営業本部長を務めていた亥子正高氏が代表に就任した。同氏に、日本での戦略や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響などを聞いた。
広い顧客ベースを生かす
EETJ パワー半導体は強力な競合が国内外に存在する市場ですが、今後、鍵になっていきそうな製品はありますか。
亥子氏 確かにパワー半導体は、価格面で見ても競争が厳しいエリアなので、そう簡単に製品展開を進められるとは考えていない。ただ、強みを発揮できる部分もある。例えば高電力用IGBTは、定格電圧が1.7kV〜6.5kVのプレスパックIGBTをそろえている。高周波インバーター、UPS(無停電電源装置)、発電所や変電所で使われるハイパワーの電力変換装置など向けで、これらの製品で差別化できると考えている。
産業向けで既に一定のシェアを持っている点火装置用IGBTは、今後車載に展開していきたい製品だ。
SiCについては、現在はディスクリートのSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)やSiC-MOSFETを提供しているが、IXYSのパッケージング技術とディスクリート品を組み合わせたモジュールの展開も考えている。
加えて、フィリピンに後工程の工場を新設するなど、半導体の製造能力をグローバルで増強している。この工場は既に稼働している。
EETJ 特にパワー半導体については、新規の顧客にアプローチしていくというよりも、既存の製品と組み合わせて、既存の顧客に提案していくのでしょうか。
亥子氏 もともと顧客のベースは広いと思っている。ヒューズの顧客には半導体を、半導体の顧客にはヒューズなどの保護素子を、といった具合に提案していくのも重要な戦略だ。先ほども話したが、幅広い製品ポートフォリオをあらゆる分野に展開するというのが基本的な方針になる。
EETJ 確かに、展示会でLittelfuseジャパンのブースを見ても、製品がかなり多いなという印象があります。
亥子氏 その分、分かりにくさはあるかもしれない。そのため、「どうやって製品同士をリンクさせていくか、組み合わせていくか」を考えていく必要がある。その一環として、アプリケーションノートも充実させている。
EETJ 製品やサポートに対して、日本ならではの要求というのはありますか。
亥子氏 やはり品質面での要求は他国よりも厳しい。それもあって、筑波事業所を拠点とした品質管理に力を入れる。実は従来、この部分が弱かった。筑波事業所で製造されているポリスイッチについてはもちろん、高いレベルの品質管理とサポートを提供できるが、海外生産品を使用する日本の顧客に個別の対応をするのは難しいからだ。それを解消するため、筑波事業所でポリスイッチ以外も含めて、日本向け製品の品質管理とサポートをカバーする方針とした。
研究開発体制も強化
EETJ 日本での製品開発は行うのでしょうか。
亥子氏 日本は自動車や環境エネルギー関連の技術開発で先端を行っている市場でもあるので、こうした分野に向けたLittelfuseジャパン発の製品開発も考えている。そのために、FAE(フィールドアプリケーションエンジニア)や設計エンジニアについて、国内でのリソース拡充を図っている。
日本では、ポリスイッチの研究開発は行っているが、例えばEV(電気自動車)用の高耐圧ヒューズのような車載製品は、海外で設計、製造された物を日本で展開する戦略と並行して、日本の自動車メーカーの要求に合わせて開発するという戦略も進めていきたい。
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