光配線でサーバボードを直結したラックシステム開発:計算速度1桁向上
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)は2020年10月16日、全サーバボード間を光配線で直結したラック型サーバシステムを「世界で初めて完成させた」(NEDO/PETRA)と発表した。電気スイッチでの中継を排除したことにより、従来よりも計算速度を1桁高速化できるという。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)は2020年10月16日、全サーバボード間を光配線で直結したラック型サーバシステムを「世界で初めて完成させた」(NEDO/PETRA)と発表した。電気スイッチでの中継を排除したことにより、従来よりも計算速度を1桁高速化できるという。
NEDOとPETRAでは、FPGAを搭載したアクセラレータボードを実装した8台のサーバボードの全ノード間を光配線で直結したフルメッシュ接続とFPGA内に構成したスイッチング機能を組み合わせたラック型サーバシステムを開発。電気スイッチで中継することなくサーバボード間のデータ通信を行うことを可能にした。これにより、電気スイッチを介してデータを伝送する従来システムと比べて、計算速度を1桁高速にすることに成功したという。具体的には、「例えば心臓や肺の診断などに用いられる3次元CT(コンピューター断層撮影法)の画像処理では、電気スイッチを介した電気接続によるコンピューターシステムで5分を要していた処理時間を30秒に短縮できる」(NEDO/PETRA)という。
今後、NEDOとPETRAは「本プロジェクトで開発中の光電子集積インターポーザー技術の成果を今回開発したラック型サーバシステムにも適用し、並列度を上げるとともに、さらなる省電力化を可能にする技術開発を進めていく」としている。開発したラック型サーバシステムについては2020年10月20日から23日までオンライン形式で開催される「CEATEC 2020 ONLINE」で発表し、大量のデータを高速で処理するデモンストレーションを行う予定。さらに、同年12月9〜11日に東京ビッグサイトで開かれる「interOpto 2021」で展示する予定だ。
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