検索
連載

「iPhone」は半導体進化のバロメーターであるこの10年で起こったこと、次の10年で起こること(47)(3/3 ページ)

2020年10月に発売された「iPhone 12 Pro」を分解し、基本構造を探る。さらに、搭載されている主要チップの変遷をたどってみよう。そこからは、iPhoneが半導体の進化のバロメーターであることが見えてくる。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

iPhoneを見れば半導体の進化が分かる?

 2020年は日本の「5G元年」に当たる。3月から始まった5Gサービスに伴い、多くの5Gスマートフォンが発売されている。安価なもの、フラグシップ機などのモデルが市場に投入され、5G通信が次の成長のキーとして扱われている。

 弊社は既に数十種の5Gスマートフォンを分解観察しているが、その中の代表的な6機種を表2に掲載した。いずれもサブ6GHz帯をサポートしていて(ミリ波対応は、表2では1機種のみ)、カメラが“松竹梅”の差となっている。


表2:2020年に発売された代表的5Gスマートフォンと、それらに搭載されているカメラ/センサー 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 「Google Pixel 5」(2020年10月15日発売)やiPhone 12(10月23日発売)はデュアルカメラで、それ以外の4機種はToFセンサーを搭載していて距離を測定できる。5G対応が、ハイエンド/フラグシップという位置付けの要素になっているわけではなく、カメラやToFセンサーなどの新技術を取り込むことで、ハイエンド、フラグシップとしての差を生み出しているわけだ。

 図5は、2007年に発売された初代iPhone 2Gと最新のiPhone 12 Proの外観と内部基板、iPhoneで活用されたプロセッサシリコンの様子である。この間、ほぼ毎年のようにAppleはプロセッサや通信、センサーを進化させ続けている。当初は外部から購入していたプロセッサは、「A4」から自社製となった。iPhone 12で用いられているA14は、Apple製プロセッサの10チップ目となる。AI(人工知能)機能やGPU機能の強化、カメラ処理など他分野(自動運転やロボティクス)にも十分適応できるほどの進化が続いている。


図5:iPhoneは半導体の進化のバロメーターである 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 筆者にとって、前職の半導体メーカー時代においても、また多くのシステムやチップを評価、解析する現職の時代においても、最もエキサイティングな半導体進化を続けている1社がAppleである(他にもすごいメーカーはある!)。

 iPhoneは図5の表題通り、半導体進化のバロメーター、生き字引となっているのだ。Appleには心からの敬意を示しつつ、今後も観察や解析を通じで、同社の「すごさ」を読者の皆さんにお伝えしていければと思う。そしてもちろん分解だけではなく、Apple製品のユーザーとしても(10機種以上使っています)、今後もAppleのすごさを味わっていきたいと思っている!

執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年にわたる半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る