スマホディスプレイ、LCDからOLEDへの移行が加速:タッチ性能がより重要に(2/2 ページ)
タッチディスプレイは常にスマートフォン体験の中心になるもので、画面の使用時間は通話時間やデータ消費量よりも重要なユーザー測定基準になっている。多くの人にとってスマートフォンのディスプレイはデジタル世界への“主要な窓口”であるため、ディスプレイの品質(視覚的な品質とタッチ体験の両方)がスマートフォンの価値の中核であるのはもっともなことだ。
5Gはディスプレイ技術にも影響を与える
5G(第5世代移動通信)の登場により、スマートフォンのデータ帯域幅が劇的に増加するといわれているが、それは一般ユーザーの日常生活にどのような影響をもたらすのだろうか。実際のところ、かなり大きな影響が及ぶとみられる。
現在われわれが持ち歩いているスマートフォンは、“ポケットの中のスーパーコンピュータ”だといえるが、5Gの登場によって、クラウドコンピューティングで動作する仮想世界に接続可能な、没入型ポータルへと変化していくだろう。さまざまなタスク処理を、スマートフォンからクラウドに移行できるようになるため、より没入度の高いゲームやビデオストリーミングの他、シームレスなAR(拡張現実)、極めて明瞭なテレプレゼンス(ビデオ会議システム)などを実現できるようになる。高速化と高輝度化、高深度を実現し、超低レイテンシで応答性にも優れる素晴らしいディスプレイは、没入型世界におけるシームレスなやりとりを実現していく上で、重要な鍵となるだろう。また、このようなディスプレイは、消費電力量が大きいため、低消費電力かつ節電可能なソリューションの開発も重要だと考えられる。
フレキシブルOLEDへの移行と、その基盤となる技術により、ユーザー体験が向上するさまざまな機能の搭載が期待される。デバイスメーカーは、より革新的なデザインを生み出すことが可能になるだろう。
顔認証機能の統合も?
将来的には、携帯電話の前面全体だけでなく、側面や背面にまでディスプレイが広がっていくかもしれない。スマートフォンにはもはや物理的なボタン(音量調節や電源ボタンなど)がなくなり、静電容量タッチ技術が全面的に活用されていくのではないだろうか。
さらに、ディスプレイに直接、顔検出機能などを統合することも考えられる。ディスプレイのタッチセンサーを利用して、スマホが顔を映すために持ち上げられたことを認識し、同時にディスプレイを暗くしてバッテリーを節約するのだ。こうなれば、顔認識に使われているIRセンサー(赤外線センサー)を取り外せるので、真のベゼルレスディスプレイを実現できるだろう。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「iPhone」は半導体進化のバロメーターである
2020年10月に発売された「iPhone 12 Pro」を分解し、基本構造を探る。さらに、搭載されている主要チップの変遷をたどってみよう。そこからは、iPhoneが半導体の進化のバロメーターであることが見えてくる。 - 今後の「iPhone」、注目はアンテナモジュールか
iFixitがAppleの最新機種「iPhone 12」の分解レポートを公開した。同レポートを基に考察すると、今後のiPhoneの注目ポイントはアンテナモジュールではないだろうか。 - 航空電子、額縁レスで全面透明のタッチパネル開発
日本航空電子工業は、額縁配線がない全面透明の静電容量式タッチパネル「Full Touch Sensor」を開発した。車載向けの他、公共交通機関やデジタルサイネージといった用途に向ける。 - エプソン、スマートグラス向け光学エンジンを外販
セイコーエプソンは、独自のシリコンOLED(有機EL)ディスプレイと光学技術を組み合わせた、スマートグラス向け光学エンジン「VM-40」モジュールを開発し、外販を始めた。