東北大と山形大、衝撃発電軽金属複合材料を開発:単位体積当たり出力電圧は4倍
東北大学と山形大学の研究グループは、鉄コバルト系磁歪ワイヤとアルミニウム合金からなる衝撃発電複合材料を開発した。強度や高温耐性が求められる自動車部材や輸送機器のエンジン駆動部などに実装して、衝撃による発電が可能となる。
鉄コバルト磁歪ワイヤをアルミニウム合金に埋め込む
東北大学大学院環境科学研究科の成田史生教授グループと山形大学学術研究院の村澤剛教授グループは2020年11月、鉄コバルト系磁歪ワイヤとアルミニウム合金からなる衝撃発電複合材料を開発した。強度や高温耐性が求められる自動車部材や輸送機器のエンジン駆動部などに実装して、衝撃による発電が可能になる。
逆磁歪効果を利用した振動・衝撃発電複合材料はこれまで、エポキシ系母材に限られており、用途によっては耐衝撃性が課題になっていた。研究グループは今回、金属母材の複合材料を開発することで、耐衝撃性などの課題を解決した。
具体的には、2本の鉄コバルト(Fe‐Co)磁歪ワイヤをねじり合わせ、アルミニウム合金に埋め込む技術を開発した。埋め込んだFe‐Coワイヤは東北特殊鋼製で、直径は0.5mm。鋳型と治具の材料および形状を工夫したことで、数本のワイヤを直線状に立てたまま、アルミニウムの鋳造に成功した。製作時の温度や時間などを最適に制御すれば、強度をさらに高めることも可能とみている。
複数のワイヤをねじって1本にする「より構造型」と呼ばれる衝撃発電複合材料は、1回の衝撃荷重(変位速度は毎秒2mm)で1cm3あたり約0.2Vの出力が得られることを確認した。この値は、「より構造型」ではない衝撃発電複合材料に比べて、出力電圧は4倍も増えた。電力は10倍以上が期待できるという。バイアス磁場の方向を工夫すれば、さらに高い出力が得られるという。
研究グループは今後、自動車や船舶、航空機など実働外力と使用環境に対応できる衝撃発電軽金属複合材料の設計や開発、評価を行っていく方針である。
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