「業界最高の性能指数を実現」する750V耐圧SiC FET:価格はシリコンと同水準、UnitedSiC
米国UnitedSiCは2020年12月1日(現地時間)、同社の「第4世代SiC FET」として、750V耐圧の新製品を発表した。同社は、単位面積当たりのオン抵抗やスイッチング性能など、「業界最高の性能指数」を実現したと説明している。またコスト面でも、「スーパージャンクション(SJ)構造のシリコンMOSFETのプレミアム品とほぼ同水準の価格だ」という。
米国UnitedSiCは2020年12月1日(現地時間)、同社の「第4世代SiC FET」として、750V耐圧の新製品を発表した。同社は、単位面積当たりのオン抵抗やスイッチング性能など、「業界最高の性能指数」を実現したと説明している。またコスト面でも、「スーパージャンクション(SJ)構造のシリコンMOSFETのプレミアム品とほぼ同水準の価格だ」という。
新世代のSiCカスコードデバイス
同社はその社名通り、SiCパワーデバイスの専業メーカーで、米国ニュージャージー州のラトガース大学(Rutgers University)が1999年に立ち上げたSiC Researchが前身。SiCショットキーダイオードやJFETの開発を手掛け2014年から本格的に市場展開してきた。
同社は近年、SiC JFETと特別に設計した低耐圧シリコンMOSFETをカスコード接続することで、ノーマリーオフ動作、高性能なボディーダイオードを実現するSiCカスコードデバイスに注力。第3世代のプラットフォームでは650V耐圧、1200V耐圧の製品を展開。また、2019年には7mΩという低オン抵抗の製品も発表している。
今回発表したのは、このSiCカスコードデバイスの第4世代製品。60A品と21A品があり、オン抵抗(25℃時)はそれぞれ18mΩ、60mΩ。3ピン、4ピンのTO247パッケージで提供する。同社は、「比類ない性能指数と、単位面積当たりのオン抵抗と内在静電容量の低さが特長」と説明している。また、初の750V耐圧製品でもある。
具体的な性能について、同社President兼CEO(最高経営責任者)のChristopher Dries氏らは、競合の650V耐圧SiC-MOSFET製品と比較しながら説明。同じダイサイズで比べると導通損失は25℃において65〜75%、125℃において45〜70%減少するといい、「同じフットプリントやパッケージタイプなら使用温度範囲で最小の導通損失を実現する」という。さらにハードスイッチング性能やソフトスイッチング性能などに関しても、下図のように高い性能を持っていることを強調していた。
同社の日本法人代表、望月靖志氏は、「独自のカスコードアーキテクチャによって同業他社のほぼ半分のダイサイズで同じオン抵抗を実現した。ここでは大きなコストメリットも得られる。また、ダイが小さければスイッチングパラメータも改善できる。われわれの技術は導通損失、スイッチング損失ともに優れた値を実現しつつ、高いコスト競争力も有している」と強調。コスト面については、SJ構造のシリコンMOSFETの「プレミアム品と比べても、ほぼ同水準の価格だ」という。
また、ゲートしきい値電圧は5Vであり、0〜12Vの標準的なゲートドライバICを使用可能。「SJ構造のシリコンMOSFETやIGBTなどを使っている顧客は容易にSiCへと移行できる」としている。
新世代の製品としてまず750V耐圧品をリリースした理由については、Dries氏は「自動車業界からの、バス電圧が400〜500Vのシステムでブレークダウン電圧マージンを確保したい、という要望に答えた」と説明。同製品は車載向け規格「AEC-Q101」認定も受けており、オンボードチャージャーやDC-DCコンバーターなどの車載分野への展開を進めるほか、ITインフラや再生可能エネルギー分野などもターゲットとしていく。また、今後9カ月をかけ、コストパフォーマンス、熱効率、設計上の柔軟性を向上させた、さまざまな第4世代デバイスを発表する予定だという。
なお、日本では正規販売代理店のマクニカアルティマカンパニーが製品を取り扱う。
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