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露光技術の微細化限界を突破する自己組織化技術福田昭のデバイス通信(291) Intelが語るオンチップの多層配線技術(12)

今回から、ArF液浸技術やEUV(極端紫外線)技術などの露光技術の微細化限界を超える、あるいはこれらの露光技術を延命させる次世代のリソグラフィ技術「自己組織化リソグラフィ」をご紹介する。

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リソグラフィのトップダウンとボトムアップ

 半導体のデバイス技術と回路技術に関する国際学会「VLSIシンポジウム」では、「ショートコース(Short Course)」と呼ぶ技術講座を開催してきた。2020年6月に開催されたVLSIシンポジウムのショートコースは、3つの共通テーマによる1日がかりの技術講座が設けられていた。その中で「SC1:Future of Scaling for Logic and Memory(ロジックとメモリのスケーリングの将来)」を共通テーマとする講演、「On-Die Interconnect Challenges and Opportunities for Future Technology Nodes(将来の技術ノードに向けたオンダイ相互接続の課題と機会)」が非常に興味深かった。そこで講演の概要を本コラムの第280回からシリーズでお届けしている。講演者はIntelのMauro J. Kobrinsky氏である。

 なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。

 本シリーズの第5回から第11回(前回)までは、多層配線の微細化と性能向上を両立させる要素技術を報告してきた。今回からは、ArF液浸技術やEUV(極端紫外線)技術などの露光技術の微細化限界を超える、あるいはこれらの露光技術を延命させる次世代のリソグラフィ技術「自己組織化リソグラフィ」をご紹介する。

 ここで紹介するリソグラフィ技術は、「ボトムアップ・リソグラフィ」技術とも呼ばれる。基板表面に特定の加工を施すことで、材料の塗布と熱処理、現像によってボトムアップで回路のパターンを形成する。これに対して従来の露光技術、すなわち、レジストに上から光(マスクを通過した光、またはマスクで反射した光)を照射してレジストを硬化させ、現像によって回路のパターンを描く技術は、「トップダウン・リソグラフィ」技術と呼ぶ。

 ボトムアップ・リソグラフィ技術の要となるのは、「自己組織化(Self-Assembly)」と呼ばれる現象だ。厳密には自己組織化(Self-Organization)ではなく、「自己集合」と呼ばれる現象なのだが、半導体製造技術のコミュニティーでは「自己組織化」「自己組織化リソグラフィ」などと呼ぶ。本稿でも「自己組織化」の呼称を使う。

誘導自己組織化(DSA)リソグラフィの基本原理

 自己組織化(自己集合)とは、自然発生的に分子が集合し、特定の構造(組織)を形成する現象を指す。この構造は通常、半導体集積回路の回路パターンとは全く違うパターンを描く。そこで、何らかの処理を基板表面に施すことで、所望の回路パターンを描くように分子を誘導する。この技術を、「誘導自己組織化(DSA:Directed Self-Assembly)」と呼ぶ。

 誘導自己組織化(DSA)リソグラフィの特徴は、光を使わないことにある。言い換えると、解像限界を決めるのは、光の波長ではない。解像限界は分子の大きさによって決まる。原理的には、数ナノメートルピッチの平行な配線パターンを描くことができる。

 DSAリソグラフィの研究開発に使われている代表的な分子は、「ポリスチレン(PS:Polystyrene)」と「ポリメチルメタクリレート(PMMA:Poly(methyl methacrylate))」の共重合体(コポリマー)「PS-b-PMMA」である。このPS-b-PMMAを基板に塗布して熱処理すると、PS部分とPMMA部分がきれいに集合した規則的な立体構造を自然に形成する。例えば表面には、指紋に似た模様を描く。


「誘導自己組織化(DSA:Directed Self-Assembly)」によるパターン形成の原理。「ポリスチレン(PS:Polystyrene)」と「ポリメチルメタクリレート(PMMA:Poly(methyl methacrylate))」の共重合体(コポリマー)「PS-b-PMMA」は、熱処理によって規則的な立体構造が自然に生成する。基板の表面にガイド層を設けることで、平行配線パターンに類似の立体構造を意図的に作り出せる。出典:Intel(クリックで拡大)

 あらためて今度は、基板表面に平行配線群と同じパターンを描く薄膜層(ガイド層)を作成してからPS-b-PMMAを塗布して熱処理する。すると、PS部分とPMMA部分が平行配線群と同じパターンを描くように集合する。エッチングによってPS部あるいはPMMA部を除去すれば、配線あるいは絶縁膜に相当する平行直線群が残る。

次回に続く

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

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