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10年間でノウハウを蓄積、Appleプロセッサの集大成となった「M1」この10年で起こったこと、次の10年で起こること(49)(3/3 ページ)

2020年11月に発売されたApple「Mac」に搭載されているプロセッサ「Apple M1」。これは、Appleが10年の歳月をかけてノウハウを蓄積したプロセッサ技術の“集大成”といえる。

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M1が生まれるまで

 図6にM1の系譜を示す。M1は、突如として生まれたわけではない。2010年にAppleが自らの手でiPhone用のプロセッサ「A4」を開発し、「iPhone 4」に採用した。それから10年。Appleはその間、毎年プロセッサ性能を向上させ、iPhone、iPad、「iPod」「Apple TV」など多くの製品に活用し続けてきた。さらに、高性能なiPad Pro用に、GPUなどを強化したAシリーズのX版も並行して開発している。


図6:Appleプロセッサの集大成となったM1 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 Appleは10年という歳月をかけ、半導体開発の膨大なノウハウと経験を積み上げている。今やAppleは、専業メーカー以上の経験を持っていると言ってよいだろう。

 M1は、2018年に発売されたiPad Proに搭載された「A12X」のパッケージ技術、同年にMacで採用されたセキュアプロセッサT2、そして2010年から登場したAシリーズの、全てのDNAが注ぎ込まれたものであることは間違いない。今後出てくるであろう、「M1X」や「M2」「M3」にもこれらのDNAが引き継がれていくことになる。

 A14 BIONICとM1が、CPUやGPUコア数の差ですみ分けていることを考えると、ベースとなるものは同じで、スケーラブルな展開ができる構成になっており、8コアを12コア、16コアにすることは極めて容易だと思われる。

“乱立の世代”が再び到来

 図7は、2020年に発表されたPCの、代表的なプロセッサの比較である(AMDは紙面の関係で省略)。それぞれが異なるプロセスで製造されているので、横並びの比較は完全にはできない。しかし同じ時代に、メーカーによって製造技術がバラつき、内部の構成配分も大きな差が出てきたことで、1990年前後の“乱立の時代”が再び到来したことを読み取っておくべきだろう。


図7:2020年に発表されたPCの、代表的なプロセッサ 出典:テカナリエレポート(クリックで拡大)

 Intelのプロセッサはシリコンのおおよそ6割がCPUとGPUだ。MicrosoftとAppleはArmベースのCPUを用い、内部のCPU、GPUの比率は4割弱となっている。同じものを作るのに、これだけの差が生じるのには理由がある。Appleはさまざまなアクセラレーター演算器とCPU、GPUを絡め性能を作り上げている。Microsoftも同様(主にDSP)だ。このあたりは今後セミナーなどで解説していく。

 2021年は、各社からさらに個性のあるチップが出てくるものと思われる。弊社も観察や解析を強化していく。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に振り回された1年であったが、技術の分野では新時代にふさわしいチップが続々と誕生し、次の脈動が明らかになった年でもあった。コロナ収束を願いつつ、皆さまにとっても当社にとっても2021年が良き年になりますように。

執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年にわたる半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


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