Gelsinger氏の“帰還”、Intelにとっては好機か:次期政権との関係構築も鍵に(3/3 ページ)
CEO(最高経営責任者)の継承は、非常に重要である。最近の報道によると、IntelのCEOであるBob Swan氏が近々退任し、その後任としてPat Gelsinger氏が就任するという。一方Qualcommは、現プレジデントであるCristiano Amon氏にCEOの後任を託すとしている。
常に業界アナリストたちからの人気が高い
米国EE Timesは2012年11月に掲載した記事の中で、以下のように指摘している。
「過去45年間にわたり、Intelの後継者育成計画はあまりに整然とし過ぎていて、退屈極まりないといえる。今回、Paul Otellini氏が2013年5月にCEOの座を退くという予期せぬ発表を受け、Intelがその後任者を初めて社外から迎えるのではないかという可能性が大きく開かれることになった」
Otellini氏の突然の発表により、Intelにとって聖なる伝統とされる、規律正しいCEO後継者選定が崩れ去った。EE Timesが指摘していたように、Intelの新しい後継候補者たちはこれまで、長期間にわたってCOO(最高執行責任者)を務めることにより、丁寧な教育を受けてきたのだ。
公平を期すために言うと、Otellini氏は自らの計画に基づき、Sean Maloney氏を育ててきた。しかし、悲劇的な一撃によって、Maloney氏は別の道へと追いやられる。Maloney氏は一時期、Intel Chinaで実権を握ることによって復帰を果たし、その後、自ら引退計画を発表した。
移行時期に混乱が生じると必ず、外部からの臆測や内部の不安定な状況により、不確実性や不安が深刻化してしまうものだ。
米国EE Timesの編集者たちは2012年に、いつものようにIntelの次期CEOの候補者リストを作成している。
われわれはこの時、想像力をかなり自由に膨らませ、その候補者リストの中に、Moshe Gavrielov氏(後にXilinxのCEOに就任)や、Qualcommの元バイスプレジデントだったSanjay Jha氏、Scott Forestall氏(2012年にAppleを退社)、Warren East氏(当時のArmのCEO)、IntelのDadi Permutter氏、Brian Krzanich氏などを挙げていた。
また、もちろん手堅くPat Gelsinger氏の名前もリストに入れ、「Intelの『プリウス』になり得る」とコメントしている。
われわれは、「VMwareのチーフエグゼクティブであるGelsinger氏は、Intelにおいて数十年間にわたり、プロセッサ設計製品からPC/データセンターグループまであらゆる部門を主導し、同社初のチーフテクノロジストとしての任務を遂行した経歴を持つという、社外候補者である」と述べている。ある業界アナリストは、「Intelを次なるレベルに導くためには、社内外の両見地から、Gelsinger氏以外に適任者はいない」と熱く語っていた。
これは、デジャヴとしか言いようがない。
Gelsinger氏は常に、メディアとアナリストコミュニティーの両方からの人気が高かった。同氏は、スピーチが非常にうまかったため、数十年間にわたって絶大な信頼を培ってきた。これは、同氏の非常に大きなプラス面であり、決して過小評価するようなことがあってはならない。
それでも、Gelsinger氏をIntelの救世主として扱うとなると、大きな過ちを犯す恐れがある。懐古の情だけでは、Intelを”次なるレベル”へと引き上げることはできない。また同様に、Gelsinger氏は技術者としての経歴を持ち、決して数字の計算ばかりしているような人物ではないが、だからといって、同氏がIntelの事業を確実にうまく運営することが可能であると自動的に保証されるわけではない。ただ、筆者はエンジニアではないため、このような見方は偏っているのかもしれない。しかし、技術コミュニティーもそろそろ、「技術メーカーを救うことができるのは、工学の学位を持つCEOだけだ」という偏見を捨てるべき時が来たのではないだろうか。
結局のところ、Gelsinger氏がIntelに戻ってくるのは好機と言えるだろう。
世界最大の半導体企業であるIntelのCEOとなるGelsinger氏。同氏の栄冠は、次世代チップの設計、プロセス技術、材料に不可欠となる研究開発および製造技術への投資を、ここ米国で行うことである。Intelには、バイデン次期政権との関係を築くチャンスもある。バイデン政権は、中国との無意味な貿易戦争を長引かせるよりも、米国の技術に投資することに関心を持っているからだ。
これは、一企業のCEOが仕事を成し遂げるための“外交手腕”を持っているかどうかという、異例の疑問を投げかけているとも取れるのではないだろうか。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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