試練の時が続くOpen RAN、見通しは不透明:注目度は高いが
複数の異なるメーカーが提供するコンポーネントやサブシステム、ソフトウェアを使用してRANを統合、展開、運用し、オープンなユーザーインタフェースで接続する能力は、技術的な観点から見ると大きな進歩を遂げている。一方でOpen RANは多くの地域、特に米国で政治問題化している。
2020年のモバイル通信最大の話題は、オープン化、いわゆるOpen RANが支持されたことだと主張する人はほとんどいないだろう。
複数の異なるメーカーが提供するコンポーネントやサブシステム、ソフトウェアを使用してRANを統合、展開、運用し、オープンなユーザーインタフェースで接続する能力は、技術的な観点から見ると大きな進歩を遂げている。こうした進歩は、CPRI(Common Public Radio Interface)やLTE X2インタフェースなど、今日のモバイルネットワークで使用される多数のインタフェースが自由に使えるようになる鍵となる。
一方でOpen RANは多くの地域、特に米国で政治問題化している。また、オープンネットワークへの移行によって、モバイルネットワークのセキュリティリスクに対する懸念も高まっている。
Open RAN関連の業界団体や連合が整理されていない状況が、この問題を複雑にしている。一方、中国の通信機器大手であるHuaweiはこれら団体の多くに加盟して、いくつかの技術カテゴリーで重要なIP(Intellectual Property)を所有している。こうした状況で、政治的な目標のためにHuaweiに対してあからさまなバッシングを行うのは方向性が違うのではないだろうか。
業界アナリストは、Open RANに関する非現実的な展開予測とともに、将来性や重要なIPについても予測をしている。
だが現実には、主要な携帯通信事業者に関する限り、まだ幅広い展開の準備ができていない状況だ。
こうした不安材料にもかかわらず、多くの通信事業者は展開の取り組みを続けており、「オープン」なモバイルネットワークから長期的な利益を期待できると考えている。ただし、オープンな5G(第5世代移動通信)ネットワークにおいて既存の実証済み技術や機器がどのように使われるのかは、まだ分からない。
英国の大手通信事業者であるThreeのCEO(最高経営責任者)を務めるRobert Finnegan氏は2020年12月下旬に、「Huaweiの既存機器の排除を求める政府の命令に従って、これ以上機器を交換する考えはない」と述べている。
最近では、米国の通信事業者であるVerizonのCTO(最高技術責任者)を務めるKyle Malady氏も、Open RANについて同様の現実的な発言をしている。Malady氏はオープンネットワークのコンセプトを支持しているが、Verizonは同技術を、すぐに適用できるソリューションとは考えていない。
ドイツの通信事業者であるT-Mobileでネットワーク部門の責任者を務めるNeville Ray氏は2020年末の投資家向けイベントで、Open RANは、特にIPやシステム統合、信頼性に関して、未解決の問題が数多く残っていると指摘した。また、ネットワークが停止した場合、通信事業者は数多くの個別のサプライヤーとの連絡を余儀なくされると警告している。
Ray氏は、T-Mobileがオープンスタンダードとオープンインタフェースはサポートするが、Open RANの背後にあるビジネスモデルについては、まだ見極められないと述べる。
同様に、業界団体である5G Americasは、11月に発表したポリシー・ステートメントで、オープン化に向けた機運が高まっていることを認めながらも、「Open RANの議論はそれほど単純ではないというのが実情だ」との見解を示した。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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