1006サイズで高インダクタンスの薄膜金属インダクター:TWS向けにTDKが開発
TDKは2021年3月23日、主にTWS(True Wireless Stereo/完全ワイヤレスイヤホン)に向けたインダクター「PLEシリーズ」として、1.0×0.6×0.7mmの「PLEA67BBA2R2M-1PT00」を開発し、量産すると発表した。TWSに搭載されている電源回路用インダクターで、1006サイズと小型ながら、2.2μHと高いインダクタンスと500mAの定格電流を実現している。
TDKは2021年3月23日、主にTWS(True Wireless Stereo/完全ワイヤレスイヤホン)に向けたインダクター「PLEシリーズ」として、1.0×0.6×0.7mmの「PLEA67BBA2R2M-1PT00」を開発し、量産すると発表した。TWSに搭載される電源回路用インダクターで、1006サイズと小型ながら、2.2μHと高いインダクタンスと500mAの定格電流を実現している。
TDKは、「PLEシリーズは、TDKが蓄積してきたプロセス技術と材料技術を駆使している」と説明する。プロセス技術としては、TDKがHDD磁気ヘッドで培ってきた薄膜技術を応用し、高精度にコイル層を積層することで、高インダクタンスを実現した。材料技術では、高い透磁率を持つメタル系の磁性材料を使用した。「メタル系磁性材料を用いたインダクターとして、1006サイズはかなり小型だ」とTDKは述べる。
TDKには、同じように金属磁性材料を使用した薄膜インダクターである「TFMシリーズ」があるが、PLEシリーズは、より小型で、より高いインダクタンスまで含めたラインアップを予定している。コイルもTFMシリーズは2層だが、PLEシリーズでは2層以上(現時点では4〜6層)となっている。
PLEシリーズは、電源効率の向上も目指して開発された。TWSやウェアラブル機器といった小型バッテリーで駆動する機器の電源回路では、消費電力をできるだけ抑えるため、PFM(パルス周波数変調)方式のスイッチングレギュレーターを採用しているケースが増えている。TDKは「PWM(パルス幅変調)方式に比べ、PFM方式ではDC電流が非常に少なく、AC電流のピークの方が大きい。そこで、PLEシリーズは交流損失を減らす、つまり、高いQ値(品質係数)を実現するというコンセプトで開発した」と説明する。
競合他社品(1810サイズ)と電源効率を比較した。PLEA67BBA2R2M-1PT00の方が小型で直流抵抗(DCR)も高いが、電源効率(PFM方式で駆動した場合)を比べると、出力電流100mAにおける効率は89.4%と、競合品よりも高くなっている 出典:TDK(クリックで拡大)
さらに、PLEシリーズは、実装基板のグランド(GND)面に与えるノイズも考慮されている。TWSをはじめ、ウェアラブル機器では、実装基板のGND面が小さい。「GND面が小さくなると、電位の安定がどうしても取りにくくなってしまう。そこで、PLEシリーズは、GND面に対して磁束が水平に回るような構造とした。これによって、GND面への磁束の影響が少なくなる」(TDK)。同社はこれを「Horizontal coil」と呼んでいる。
その他、PLEシリーズは金属モールドを使用しているので、TMSに搭載されている永久磁石の影響を受けにくくなっている。TWSのような小型の製品では、小型になればなるほど、インダクターと永久磁石の距離が近くなり、永久磁石からの漏れ磁束によってインダクターが飽和してしまう。PLEシリーズでは金属モールドを使用することで、この課題を解消する。
PLEA67BBA2R2M-1PT00のサンプル単価は20円。まずは月産500万個の規模で量産する。
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