3225サイズで47μHの車載用インダクター、TDKが量産:金属材料で大電流にも対応
TDKは2020年10月13日、車載用電源系インダクター「BCL」シリーズとして3.2×2.5×1.5mm(3225サイズ)の「BCL322515RTシリーズ」の開発を完了し、量産すると発表した。磁性材料に金属を用いていながら、3225サイズで47μH(1MHz時)という高いインダクタンスと0.72A(標準値)の飽和電流を実現したことが最大の特長だ。
TDKは2020年10月13日、車載用電源系インダクター「BCL」シリーズとして3.2×2.5×1.5mm(3225サイズ)の「BCL322515RTシリーズ」の開発を完了し、量産すると発表した。磁性材料に金属を用いていながら、3225サイズで47μHという高いインダクタンスと0.72A(標準値)の飽和電流を実現したことが最大の特長だ。AEC-Q200に準拠していて、ADAS(先進運転支援システム)やECU(電子制御ユニット)を主な用途とする。
TDKによると、電装化が進む自動車では、車載用電気回路の大電流化や高密度化が進んでいることから、インダクターに対しても、大電流への対応や小型化、漏えい磁束の低減といった要求が多いという。これまで、高いインダクタンスを必要とする電源回路には、フェライト材料を用いた大型のインダクターが使用されてきたが、金属材料に比べ、大電流化に対応しにくく、漏えい磁束が比較的大きいといった課題があった。一方の金属材料のインダクターは、大電流に対応でき漏えい磁束は低いが、透磁率が低く高いインダクタンスを実現しにくいという課題を抱えていた。
BCLシリーズでは、独自の材料技術と工法を開発することで、金属材料を使いつつ、課題であったインダクタンスをフェライト材料と同等レベルまで引き上げることに成功した。
独自の技術の一つが、コイルを磁性材料で成型する際の圧力だ。TDKは、「成型にはある程度の圧力が必要だが、圧力をかけるとどうしてもコイルのワイヤにダメージを与えるので、細いワイヤを使えないのがデメリットだった」と説明する。「BCLシリーズでは、技術的なブレークスルーによって低圧で成型することに成功した。ワイヤへのダメージが減るので、細いワイヤを使えるようになる。細いワイヤであれば、同じサイズでも巻き数を増やせるので、高いインダクタンスを実現できる」(TDK)
また、電極とコイルを一体化したモノリシック構造になっていてワイヤの露出がないため、実装時などに外部から応力がかかっても、ワイヤの露出によるオープン不良が発生しにくく、高い信頼性を実現している。
BCL322515RTシリーズの定格電圧は40Vで、直流抵抗は1.22Ω、使用温度範囲は−55〜155℃。サンプル単価は50円である。量産は、まずは月産10万個からスタートする。
TDKは、「BCL322515RTシリーズは、大電流対応と高インダクタンスを両立するという、3mm形状ではこれまで“空白地帯”だった特性を実現する製品だと確信している」と強調した。
TDKによれば、今後は、47μH以下のインダクタンスもBCLシリーズとして順次、そろえていくという。「47μHでは足りない場合でも、4mm形状と少し大型化したり、あるいは高さを上げたりすることで100μH、200μHなども対応可能だ。製造プロセス上の問題もないので、顧客のニーズに柔軟に対応できる体制は整っている」(TDK)
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