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産総研ら、CNTシリコーンゴム複合材料を開発導電性や柔軟性、耐久性に優れる

産業技術総合研究所(産総研)は、導電性や柔軟性、耐久性に優れた「CNTシリコーンゴム複合材料」を日本ゼオンと共同で開発したと発表した。医療用ウェアラブル機器向け電極パッドなどの用途に提案していく。

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医療用ウェアラブル機器向け電極パッドなどに提案

 産業技術総合研究所(産総研)ナノチューブ実用化研究センターの小松正明特定集中研究専門員(現在日本ゼオン)と岸良一招聘研究員は2021年5月、導電性や柔軟性、耐久性に優れた「CNTシリコーンゴム複合材料」を、日本ゼオンと共同で開発したと発表した。高純度の単層カーボンナノチューブ(CNT)をシリコーンゴムに高分散させることで実現した。医療用ウェアラブル機器向け電極パッドなどの用途に提案していく。


導電性CNTシリコーンゴムシートの外観 出典:日本ゼオン

 電極センサーは、脳や筋肉の活動、心電図など生体情報の収集や、神経に電気刺激を加える疾患治療などに用いられている。このため、電極パッドに用いられる材料には、皮膚との密着性を高める柔軟性や、安定した導電性および、低コストで経年変化が少ない耐久性などが求められる。

 産総研はこれまで、高純度で分散性に優れた単層CNTを合成できる「スーパーグロース法」を開発。2015年には日本ゼオンがこの方法を用いて量産に成功した。さらに、産総研と日本ゼオン、サンアローの3者はオープンプラットフォーム「CNT複合材料研究拠点(TACC)」を2017年に設立し、さまざまな複合材料の製品開発を行ってきた。

 今回開発した複合材は、シリコーンゴムに対し、市販品の導電性フィラーとわずかな単層CNTを添加して高分散化した。これによって高伝導と柔軟性が両立できたという。ちなみに、単層CNTとしては日本ゼオン製の「ZEONANO SG101」を用いた。添加した量はフィラー全体の1〜5wt%である。

 研究グループは、ミラブルタイプのシリコーンゴムを用い、開発したCNT配合品とカーボンブラックを配合したサンプル品(導電性CB)の特性を測定した。この結果、CNT配合品は導電性フィラーの添加量を少なくできるため、体積抵抗率が同じであれば、硬度は導電性CB品より大幅に低くなることが分かった。


体積抵抗率と硬度および、導電性フィラー添加量の関係 (クリックで拡大) 出典:産総研

 単層CNTを添加した時の、厚み方向における体積抵抗率のばらつきについても調べた。市販品の導電性フィラーのみを用いたシリコーンゴムとの複合材料(100/0品)と、一部を単層CNT(ZEONANO SG101)に置き換えた「99/1品」および、「95/5品」を比べた。

 この結果、一部をZEONANO SG101に置き換えた開発品は、体積抵抗率のばらつきを3分の2程度に抑えることができた。研究グループは、「長尺というZEONANO SG101の特長により、CNTの絡み合い接点が増えて厚み方向の体積抵抗率の変動が抑制され、導電性が安定したため」と分析している。


体積抵抗率変動係数とZEONANO SG101の添加効果 出典:産総研

 さらに、室温でシリコーンゴムの重量平均分子量が変化することについても調べた。純度の高いZEONANO SG101を用いた開発品は、混練後から1カ月経過しても分子量を80%程度保持していることが分かった。これに対し、ZEONANO SG101を他社製単層CNTに置き換えた製品は、1週間で分子量が30%まで低下するなど、劣化が早く進んだ。


室温におけるシリコーンゴムの重量平均分子量の経時変化 出典:産総研

 今回開発した複合材料は、医療用ウェアラブルデバイスの電極パッドの他、通電性が求められる接点用や製造ラインの帯電防止用、高電圧ケーブルやモバイル機器の電磁波シールド用などに提案していく予定である。

 日本ゼオンは、開発したCNTシリコーンゴム複合化技術を用いてマスターバッチを作製した。さらに、米国のシリコーン分散液メーカーであるNovation Solutionと共同で「PURmix高濃度ゴム(HCR)ヘルスケアコンパウンド」を開発した。この製品は、腕時計型医療用ウェアラブルデバイスの電極パッドに採用された。


病気による身体の震えを軽減するCNT応用デバイスのイメージ 出典:産総研

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