「Armv9」ベースの新CPU/GPUを発表、Arm:PC/モバイル向け
Armは2021年4月に、サーバ向けCPUコア「Neoverse」から、インフラ向けプラットフォームとなる新シリーズ「Arm Neoverse V1」「Arm Neoverse N2」などを発表したばかりだが、今回立て続けにPC/モバイル用途向けの新製品をリリースした。
Armは2021年4月に、サーバ向けCPUコア「Neoverse」から、インフラ向けプラットフォームとなる新シリーズ「Arm Neoverse V1」「Arm Neoverse N2」などを発表したばかりだが、今回立て続けにPC/モバイル用途向けの新製品をリリースした。
CPUとGPU、DSU、インターコネクトIP(Intellectual Property)から成る完全な製品ファミリーは、同社のIP製品としては過去最大規模のリリースとなる。このように製品シリーズ全体を同時に刷新する同社の取り組みは、「Arm Total Compute」ソリューションと名付けられている。実際、主要なコンピューティングコアシリーズの中で唯一、今回のリリースによるアップデートが行われなかったのは、最新の製品ファミリーである機械学習向けアクセラレーションNPU(ニューラルプロセッシングユニット)「Ethos」だけだという。
「Armv9」がベースに
Armは全てのCPU製品シリーズを、新型アーキテクチャ「Armv9」をベースとした製品でリフレッシュすることにより、性能と効率の大幅な向上を実現している。Armv9によって追加された最も重要な機能としては、第2世代の「Scalable Vector Extension 2(SVE2)」技術が挙げられる。これは、Armがもともとサポートしていた「Neon SIMD」拡張命令をアップグレードしたものだ。NeonのアップデートとSVE2技術の適用により、機械学習ワークロードやさまざまな並列ワークロードの大幅な性能向上を実現できるとする。またArmは、一連の計算やセキュリティ機能を向上したことについても、後続版のArmv8命令セットのリリースの中で説明している。今後発表される「Arm Cortex」CPUコアは全て、SVE2を実装する予定だという。
Armは2021年5月、新しいCPUクラスタを備えた「Cortex-X2」を発表した。最大16MバイトのL3キャッシュと、最大32Mバイトの統合システムレベルキャッシュをサポートすることにより、最高性能を実現するという。
Cortex-X2は、旧品種である「Cortex-X1」と同じプロセス技術を適用したシミュレーションのベンチマークテストを行ったところ、サイクル当たりの命令実行数(IPC:instructions per clock)が16%、機械学習性能は100%の性能向上をそれぞれ実現した。Armによると、Cortex-X2を搭載したPCは、既存の大半のノートPCを超える性能を実現するという。
Armのライセンシー(ライセンス利用者)の中でも最大手であるAppleとQualcommは、いずれも新しい高性能SoC(System on Chip)でArmベースのPC市場に参入すべく、競争を繰り広げている。また、同じくライセンシーのMediaTekは、最新のChromebook向け製品を手掛けている。Cortex-X2が今後、その優れた性能によって、このようなライセンシーたちが迅速に目標を達成できるようサポートを提供することが可能なのか、興味深く注目していきたい。
「Cortex-A」シリーズの番号が3桁に
この他、「Cortex-A710」「Cortex-A510」も発表した。Armがこれまで使用してきた数字2桁のモデル番号(Cortex-A5x、Cortex-A7x)を、3桁の製品番号(Cortex-A5xx、Cortex-A7xx)に変更した。Cortex-A710がbigコア(高性能コア)、Cortex-A510がLITTLEコア(低消費電力コア)である。
Cortex-A710は、「Armv8」アーキテクチャを採用した前世代品「Cortex-A78」と比べると、分岐予測とデータプリフェッチが向上している他、マイクロアーキテクチャも変更されている。その結果、電力効率は30%向上し、機械学習の演算性能は2倍に、全体的な性能は10%向上した。
Cortex-A510は「Cortex-A55」の後継品種で、電力効率が20%、性能が35%向上しているという。
GPUコアについても、製品番号が3桁の新ファミリーを発表した。「Mali-G710」「Mali-G610」「Mali-G510」「Mali-G310」で、ArmのGPUアーキテクチャ「Valhalla」を採用している。Mali-G710が、Valhallaアーキテクチャベースの第3世代のプレミアムモバイルGPUであるのに対し、Mali-G310は、第1世代のエントリーレベル製品となる予定だ。
Mali-G710については、前世代の「Mali-G78」に比べて性能と電力効率が20%向上した。ソフトウェアとハードウェアの両方の機能向上を実現する新しいCSF(Command Stream Frontend)を搭載し、リアルタイム3次元コンピュータグラフィックス/コンピュートAPI(Application Programming Interface)である「Vulkan」をサポートすることにより、高性能、高効率を実現する。Mali-G710はシェーダーコアが7〜16個で、コア数を少し下げた1〜6個の製品がMali-G610である。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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