4K、高速AF対応の産業用カメラを“UVCカメラ”で実現:USBに挿すだけ
ザインエレクトロニクスは2021年6月、4K画質、位相差検出オートフォーカス(PDAF)に対応し産業用途で使用可能なUVC(USB Video Class)カメラキット「THSCU101」を製品化したと発表した。既に通販サイトであるDigi-Keyで販売を開始し、価格は約2万8000円。
ザインエレクトロニクスは2021年6月、4K画質、位相差検出オートフォーカス(PDAF)に対応し産業用途で使用可能なUVC(USB Video Class)カメラキット「THSCU101」を製品化したと発表した。既に通販サイトであるDigi-Keyで販売を開始し、価格は約2万8000円。
UVCとは、USBインタフェースを介した映像やカメラ制御といった信号の伝送方法を定めたもの。UVC対応カメラ(以下、UVCカメラ)は、UVC対応OS/アプリケーションであれば専用のドライバーソフトが不要で、USBに接続するだけで使用可能。現状、多くのOS、PCがUVCに対応しており、一般的なWEBカメラのほとんどは、UVCカメラになっている。
今回、ザインが製品化したカメラキットTHSCU101は、汎用性に優れ、扱いやすいUVCカメラながら、産業用途での使用を前提にして開発。4K画質や位相差検出オートフォーカス(PDAF)に対応するなど「他のUVCカメラにはあまりみられない」(同社)という性能、機能を備えた点が大きな特長。これまで専用ドライバーソフトが必要なケースが多かった高性能な産業用カメラを、一般的なWEBカメラ同様の“UVCカメラ化”したわけだ。
PDAFは、一般的なWEBカメラなどに採用されるコントラストAFに比べ5〜20倍程度高速にピント検出できるオートフォーカス方式で、バーコードリーダーなど速い読み取り速度が要求される用途に向く。
<PDAFとコントラストAFの比較動画>
なお、THSCU101では、PDAFだけでなく、コントラストAFにも対応し、「使用環境に応じ、PDAF、コントラストAFを組み合わせた制御も行える」(同社)
個体差のないカメラとして出荷
THSCU101の特長的な機能として「個体差調整機能」も搭載。「一般的なカメラモジュールではレンズやセンサーなどの特性バラツキにより、製品ごとに画像の色味やレンズ動作などに微妙な個体差が生じる。THSCU101では、それら個体差を測定し、個体差がないように各モジュールの設定値などを調整し、個体差のないカメラとして出荷する」(同社)という。「医療用カメラなどの用途では、カメラの個体差による微妙な色味の違いが許容されず、調整に手間がかかる場合が多い。THSCU101であれば、そういった調整が不要」(同社)
同カメラキットは、35×36×1.2mmサイズのUVCカメラ基板と、カメラケース、USBケーブルで構成。UVCカメラ基板が搭載する主なデバイスは、ソニー製1300万画素イメージセンサー「IMX258」、ザイン製画像処理LSI「THP7312」、インフィニオン(旧サイプレス)製USB3.0コントローラーIC「CX3」など。
すぐに使えるキットソリューションを拡充
同社では「画像処理LSIを販売する中で、すぐに動作するカメラとして提供してほしいという要望が多くあり、そうした声に応えた」と開発の経緯を説明。カメラを搭載するIoT機器や産業機器の試作用途への販売を見込む他、「カメラ基板をそのまま最終製品に組み込むことも可能であり、量産用途に向けても販売する方針」という。さらに「需要が増えているVR(仮想現実)/AR(拡張現実)グラスなどの用途に向けては、基板を小型化するカスタマイズなどにも対応していく。画質などのカスタマイズについても、THP7312用のカメラ開発キット(CDK)の提供などを通じて対応する」としている。
ザインでは、自社製LSIをベースにしたすぐに使用可能なキットソリューションの開発に注力。2021年3月には、独自のビデオ信号伝送技術「V-by-One HS」用ICを応用したシングルボードコンピュータ用カメラ画像伝送キットを製品化。今回のTHSCU101は、キットソリューションの第2弾製品で、今後も、キットソリューション製品のラインアップを拡充していく方針。
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