1V以下の低電圧でもグリッチが発生しない監視回路IC:IoT機器の信頼性を向上する
Maxim Integrated Products(以下、Maxim)は2021年6月21日(米国時間)、IoT(モノのインターネット)機器をはじめとする低電圧動作の機器に向け、“グリッチフリー”の電圧監視回路IC「MAX16162」を発表した。1.5Vや1.0Vあるいはそれ以下といった低電圧において、グリッチが発生しないことが最大の特長だ。
Maxim Integrated Products(以下、Maxim)は2021年6月21日(米国時間)、IoT(モノのインターネット)機器をはじめとする低電圧動作の機器に向け、“グリッチフリー”の電圧監視回路IC「MAX16162」を発表した。1.5Vや1.0Vあるいはそれ以下といった低電圧において、グリッチが発生しないことが最大の特長だ。これにより、低電圧動作のマイコンやプロセッサが誤って起動することを防ぎ、システム全体の信頼性の向上につながる。
既存の監視回路ICの大半は、低電圧においてグリッチが発生する。これは、VCCが立ち上がっていく際に、リセットピンから電流がリークしてしまうことが原因だ。電源電圧が2.5Vや3.3Vであれば、これらのグリッチは問題にはならない。だが、1.5Vや1.0V、またはそれ以下といった低電圧では、問題となる。グリッチによって、マイコンが、パワーオンリセットが完了したと誤認し、適切なパワーレベルに達する前に動作を開始してしまうからだ。これにより、入出力信号のエラーやデータのエラーが発生したり、本来定義されたものとは異なる、好ましくない状況が発生したりする。
MaximのCore Product Groupでエグゼクティブディレクターを務めるDavid Andeen氏は、「MAX16162は、このグリッチを完全に排除する」と述べる。「そのため、システムの信頼性を大幅に上げることができ、安定して動作するようになる」(同氏)
MAX16162では、リセット信号にグリッチが発生せず、VIN(入力電圧)が適切なレベルに達してからリセット信号がHighレベルにアサートされている 出典:Maxim Integrated Products(クリックで拡大)
なお、リセット回路が働くまでの時間(リセット信号がHighレベルになるまでの時間)については、使用するCPUに合わせて、0.31ミリ秒〜2秒までの間で細かく設定できるようになっている。
Andeen氏は、「グリッチフリーの電圧監視回路ICは、これまで存在しなかった。低電圧のシステムというのが比較的新しいトレンドで、まさに今、課題が見え始めたところだからだ。このトレンドのけん引役はIoT機器だろう。MAX16162は、さまざまなIoT機器の他、資産追跡や医療用ウェアラブル機器、決済用機器、産業用センサーといった幅広いアプリケーションに向ける。これらは、低消費電力であることも必要だが、何よりも信頼性が重視される機器でもある」と語った。
MAX16162は、静止電流が825nA(標準値)と低いのでバッテリー寿命も延長できる。パッケージサイズは1.06×0.73mmと小型で、類似の既存品よりも23%小型だという。4ピンのWLP(Wafer Level Package)とSOT23で提供される。動作温度範囲は−40〜125℃。
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