量産間近の酸化ガリウムSBD、評価ボードも入手可能:FLOSFIAが“自社工場”で生産へ
京都大学発のベンチャーで、酸化ガリウムパワーデバイスの開発を手掛けるFLOSFIAは、「TECHNO-FRONTIER 2021」(2021年6月23〜25日/東京ビッグサイト 青海展示棟)に出展し、酸化ガリウムを使用したSBD(ショットキーバリアダイオード)「GaO-SBD」を搭載した評価ボードなどを展示した。
京都大学発のベンチャーで、酸化ガリウムパワーデバイスの開発を手掛けるFLOSFIAは、「TECHNO-FRONTIER 2021」(2021年6月23〜25日/東京ビッグサイト 青海展示棟)に出展し、酸化ガリウムを使用したSBD(ショットキーバリアダイオード)「GaO-SBD」を搭載した評価ボードなどを展示した。
同社のGaOパワーデバイスは、α-Ga2O3という材料を使用している。コストはSiと同等レベルながら、SiCよりも低損失という特長を持つ。2015年には「世界最小の特性オン抵抗」(同社)として、既存のSiCのSBDと比べると86%の低減を実現した0.1mΩcm2のSBDを試作。2020年には600V/10AのGaO-SBDのサンプル出荷を開始し、ことしはいよいよ量産を開始する。FLOSFIAのパワーデバイス事業本部で営業部長を務める井川拓人氏は「いつでも量産可能な状態」だと述べる。
FLOSFIAは2021年3月、総額10億円のシリーズEラウンドの資金調達を完了したと発表。同リリースで、京都大学桂キャンパス近郊にマザー工場および開発拠点を整備しているとした。電子デバイス産業新聞によれば、FLOSFIAは20億円を投じて工場を本格的に立ち上げていて、2021年秋ごろには月産100万個でGaO-SBDを量産できる体制を整えていくという。
今回展示した評価ボードは、2020年から販売しているもので、大学関係や企業のR&Dなどに対し既に数十台の販売実績がある。360W出力のPFC回路での評価が可能だ。スイッチング周波数は100k〜240kHzの範囲で設定できる。
現在は、600V/10AのGaO-SBDを手掛けているが、今後はより高耐圧、大電流という2つの方向でラインアップを増やしていく。「まずは量産規模が大きく、早期に採用が進みやすい民生市場をターゲットとしているので600Vがメインとなっているが、1200Vや1700Vといった高耐圧への要求も強い」(井川氏)。その他、GaO-MOSFETも開発中だ。いずれは、SBD、MOSFETともに酸化ガリウムを用いた“フルGaO”のモジュールの開発も目指す。
富士経済が2021年6月に発表したパワー半導体の市場予測によると、2030年には465億円の市場規模が見込まれている。2030年1859億円の市場規模が見込まれるSiCパワー半導体には及ばないものの、「新しい材料のパワーデバイスを試すハードルは下がっているのではないか」と井川氏は語る。「SiCパワーデバイスは技術がこなれてきて、コストも下がってきており、“市民権”を得てきた。性能の向上を求めて(Siパワーデバイスから)置き換えることに対する抵抗感も下がっている」(同氏)
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