パワー半導体、2030年に4兆471億円規模へ:富士経済が世界市場を調査
パワー半導体市場は2020年の2兆8043億円に対し、2030年は4兆471億円規模に達する見通し――。富士経済が、SiC(炭化ケイ素)などの次世代パワー半導体とSi(シリコン)パワー半導体の世界市場を調査した。
次世代パワー半導体市場、2021年以降は年率20%近い伸び続く
富士経済は2021年6月、SiC(炭化ケイ素)などの次世代パワー半導体とSi(シリコン)パワー半導体の世界市場を調査した。これらパワー半導体市場は2020年の2兆8043億円に対し、2030年は4兆471億円規模に達すると予測した。
今回の調査は、SiCやGaN(窒化ガリウム)、Ga2O3(酸化ガリウム)などを用いた次世代パワー半導体と、MOSFETやIGBTといったSiパワー半導体を対象とした。また、パワー半導体関連の構成部材や製造装置市場についても調べた。調査期間は2020年11月〜2021年2月。
2020年のパワー半導体市場のうち、大半の2兆7529億円を占めるのがSiパワー半導体である。Siパワー半導体は中国市場で拡大したが、その他の地域は自動車や産業機器向けなどが落ち込み、2019年に比べると4.0%減少した。2021年以降は自動車向けや5G(第5世代移動通信)関連に向けた需要の増加が期待でき、2030年には3兆7981億円と予測した。
次世代パワー半導体の市場は、2020年の514億円に対し、2030年は2490億円と予測した。市場規模こそまだ小さいが、2021年以降は年率20%近い伸びが続くとみている。
富士経済は、パワー半導体市場における今後の注目製品としてSiCパワー半導体やGaNパワー半導体、Ga2O3パワー半導体を挙げた。
SiCパワー半導体は、SiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)、SiC-FET、SiCパワーモジュールが対象である。2020年は新型コロナウイルス感染症の影響もあったが、情報通信機器や太陽光発電向け需要が堅調に推移したことから、市場規模は前年比9.6%増の493億円となった。今後は、自動車向けをはじめ、鉄道車両やエネルギー機器、産業機器などへの採用が増加し、2030年は1859億円を見込む。
GaNパワー半導体市場は、2020年の22億円に対し2030年は166億円と予測した。今後も、データセンターや5G基地局への投資が増え、情報通信機器分野は堅調に推移する見通しだ。2022年以降はxEVなど自動車への搭載が期待される。
Ga2O3パワー半導体はまだわずかな市場規模だが、量産が始まる2021年には2億円規模の市場が見込まれている。SiCパワー半導体やGaNパワー半導体に比べ、高耐圧で低損失といった特長があり、低コスト化も可能だという。まずは民生機器など耐圧600Vの用途で採用が始まり、2025年以降は自動車への搭載も始まる見通しだ。2030年には465億円の市場規模を予測した。
この他、パワー半導体関連の構成材料市場は、2020年の2068億円に対し、2030年は3752億円と予測した。製造装置市場は2020年の1449億円に対し、2030年は3144億円を見込んでいる。中国や台湾市場で旺盛な設備投資が計画されており、2021年以降はアジアを中心に需要が拡大すると予想した。
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