「ルンバ対中国製」の構図で競争が進むお掃除ロボ:製品分解で探るアジアの新トレンド(50)(3/3 ページ)
中国Xiaomi系のロボット関連機器を手掛けるRoborockの多機能お掃除ロボットが2020年末に発売された。日本では大型家電量販店の独占販売となっており、ネット広告やTV-CMなどでも見かけることがあるほどにイチオシ製品として扱われている。今回は、Roborockの最上位機である「S6 MaxV」を分解した。
カメラ処理部や無線通信部
図5はS6 MaxVのカメラ処理部およびWi-Fi通信基板である。カメラ部はスマートフォンやガジェットで最上位の実績を持つ米Qualcommのチップセットが採用されている。プロセッサ、電源を最適化するための電源IC、Wi-Fiチップが全て同社製だ。この基板にデュアルカメラが接続されている。2基のカメラからのデータがプロセッサで合成され、広角な歪みのない映像として処理される。S6 MaxVにはスマートスピーカーとしての機能も備わっており、充電時には(掃除のときはモーター音が大きいため使えない)「Alexa」との連携も可能だ。Roborockでは、S6 MaxV以外の機種でも、スマートスピーカーの機能が備わったものが多数ある。
従来、掃除機にはマイクロフォンやスピーカーは無縁と思われていたが、現在は充電時の利用の幅が格段に広がっており、中国製お掃除ロボットではスピーカー、マイクロフォンは必須となっている。スマートスピーカーとしての利用だけでなく、音声指示や会話もできる。S6 MaxVでは、英語、日本語での利用が可能だ。日本語は標準語の他に、関西弁、京都弁、博多弁、津軽弁も選択できるようになっている。カーナビや会話型ロボットと同様だ。
図6はS6 MaxVのカメラ映像処理を担っているQualcommのアプリケーションプロセッサ「APQ8053」を採用している製品の一例である。APQ8053は、2個以上のカメラのデータを合成してVR(仮想現実)用の映像や全天映像を生成し、台湾HTCのVRヘッドセット「VIVE」やリコーの360度カメラ「THETA(シータ)」にも採用されている、多くの実績を持つプロセッサだ。これら以外の機器でも、中国製の製品で採用されている。
図7は、S6 MaxVの駆動系チップや部品である。コントローラーはSTMicroelectronicsの製品を採用しているが、モーターやパワー半導体は中国メーカー製が採用されている。欧米チップと中国チップが混在して活用されているのだ。部品レベルでは日本製を2個確認できたが、半導体では日本製はゼロであった。
お掃除ロボットは多機能化しており、カメラや音声処理機能を持つようになってきた今、部屋の“中核プラットフォーム”になっていく可能性がある。さらに、多数のセンサーやモーターを搭載するようになっているので、それらデバイスの統合も進んでいる。今後も分解を続けていきたい家電の一つである。
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