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「Cortex-M0」ベースのフレキシブルSoC「PlasticArm」組み込みプロセッサとして期待(2/2 ページ)

Arm Researchと英国のケンブリッジに拠点を置くPragmatICは2021年7月、英科学誌「Nature」に掲載された論文の中で、フレキシブル基板上でTFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)を使って製造した、「Arm Cortex-M0」ベースのフレキシブルなSoC「PlasticArm」について詳細を明らかにした。

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“超ミニマル”なSoC

 PlasticArmは、128バイトのRAMと456バイトのROMを備えた“超ミニマル”な、Cortex-M0ベースのSoC(System on Chip)であるが、既存の最新型フレキシブルエレクトロニクスと比べて12倍複雑な処理が可能だという。今回の開発内容の詳細については、論文「A Natively Flexible 32-bit Arm Microprocessor(ネイティブなフレキシブル化を実現する32ビットArmマイクロプロセッサ)」の中で説明されている。

 Ramsdale氏は、「PlasticArmの開発で生じた問題は」とするEE Timesの質問に対し、「初期段階の取り組みの多くは、われわれの考え方が同じであることを確認するためのものだった。例えば、Armでいう“大規模回路”は、当社ではもう少し規模の小さい回路に相当するといったことだ。また、設計プロセスの協調最適化を確実に成功させる必要があった他、半導体設計者が使う標準設計ツールを必ず使わなければならなかった」と述べている。

 「このため、当社はArmにPDK(Process Design Kit)を提供し、同社がそれをツールに実装した。ここでわれわれにとっての難題は、当社のプロセス向けに全ての設計ルールを確実かつ正確に習得できるようにすることと、FlexLogICの再現性を確保することだった。現在は、RFIDチップのためだけでなく、同じ規模で製造を行う上で、FlexLogICを使用してどの程度まで達成することができたのかを検証している段階にある」(同氏)

 フレキシブルなマイクロプロセッサの重要な要素は、「32ビットCPU」「CPUおよび周辺回路を備えた32ビットプロセッサ」「プロセッサ/メモリ/バスインタフェースを搭載したSoC」の3つだ。これらは全て、フレキシブル基板上に金属酸化物TFTで製造されている。フレキシブルな32ビットプロセッサは、「Armv6-M」アーキテクチャをサポートする「Arm Cortex-M0+」プロセッサ(80以上の豊富な命令セット)や、既存のソフトウェア開発ツールチェーン(コンパイラ、デバッガ、リンカー、統合開発環境)などから生み出される。


SoCのアーキテクチャ(左)と、「PlasticARM」および「Cortex-M0+」のCPUの比較 出典:Nature(クリックで拡大)

 完全にフレキシブルなSoCであるPlasticArmは、内部メモリからプログラムを実行することが可能だ。フレキシブル基板上で金属酸化物TFTによって構築され、NANDに相当する1万8334個のゲートを搭載した、最も複雑なフレキシブルICである。

 PlasticARMは、Armv6-M命令セットアーキテクチャを完全にサポートするため、Cortex-M0+プロセッサ向けに生成されたコードは、そこから派生したプロセッサ上でも動作することになる。


PlasticARMのダイの外観 出典:Nature(クリックで拡大)

 PlasticARMは、業界標準のチップ実装ツールを用いるPragmatICの0.8μmプロセスで実装される。チップ実装ツールの他、PDK、標準のセルライブラリ、デバイス/回路シミュレーションも用いる。

 同プロセスは、IGZO(In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)、O(酸素))をベースにしたn型金属酸化物TFT技術を使用し、200mmのポリイミドウエハー上にICを作り込む。IGZO TFT回路は、厚さ30μm以下のフレキシブル(ポリイミド)基板上にデバイスを製造するために最適化した、従来の半導体製造装置で製造される。ICのチャネル長は0.8μmで、最小の電源電圧は3Vとなっている。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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