Untether AI、Intel Capitalら主導の投資ラウンドで1億2500万ドル調達: カナダのAIチップ新興企業
データセンター向けAIチップを手掛けるカナダの新興企業Untether AI が、Tracker Capital ManagementとIntel Capitalが共同で主導した投資ラウンドにおいて、1億2500万米ドルの資金を調達した。
データセンター向けAI(人工知能)チップを手掛けるカナダの新興企業Untether AIが、Tracker Capital ManagementとIntel Capitalが共同で主導した投資ラウンドにおいて、1億2500万米ドルの資金を調達した。今回はこの他にも、カナダ年金制度投資委員会(CPPIB:Canada Pension Plan Investment Board)やRadical Venturesなどが参加していた。また投資ラウンドの一環として、Tracker Capital Managementの上級顧問を務めるShaygan Kheradpir氏が、Untether AIの理事会に参加する予定だという。
Untether AIのCEOであるArun Iyengar氏は、米国EE Timesのインタビューに応じ、「今回調達した資金は、顧客エンゲージメントのさらなる向上のために使っていきたい。今のところ、市場からの反応は非常に好意的だ。顧客企業が必要とする特定のニューラルネットワーク向けに、ソフトウェアや顧客満足体験などの適切なレベルのサポートを確実に提供していく考えだ」と述べている。
Iyengar氏は、「Untether AIはこれまで、主にエンタープライズデータセンター市場において顧客エンゲージメントを推進してきた。その中でも特に、自動運転車やロボット、工場オートメーション、監視などをはじめとするコンピュータビジョンAIアクセラレーションの分野において顧客エンゲージメントを高めている。銀行金融分野における当社の顧客エンゲージメントは、リスク分析や評価、ポートフォリオの均衡化など幅広い。また、サーバメーカーとの協業により、当社製ハードウェアをサーバ製品に統合するための取り組みも進めている」と述べている。
同社の推論専用チップは、非ノイマン型の『アットメモリコンピュート設計』を採用。INT8およびINT16の演算をサポートし(Untetherのアーキテクチャに関する詳細はこちら)、502TOPSの性能を実現するという。また、4チップのTsunAImi PCIeカード上に搭載されており、データセンター推論向けに1PetaOPSの性能を提供することが可能だ。このカードは、低速モード(720MHzに対し、ピーク性能は960MHz)で動作すると、消費電力がスイートスポットに入り、8TOPS/Wを達成する。
同社は、今回の調達資金を、第2世代チップの開発促進にも充てていくとしている。Iyengar氏は、「当社の第2世代品は、引き続き推論をターゲットとしながら、それを超える性能を実現していく予定だ。推論は現在も、エンタープライズAI市場の最大の部分を占めている」と述べる。
Untetherが最初に開発した製品は、16nmプロセス技術が適用されていた。同社はこの点について、「コストを削減しながら競争上の優位性を獲得することができるという能力に関わることだ」と述べていた。Iyengar氏は、第2世代チップに関しては、「より高度なプロセス技術の適用を検討していきたいが、現在のところファブの生産能力が不十分であるため、引き続き最先端ではないプロセスノードを選択することになりそうだ」としている。
また同氏は、「当社としては、『他の誰もが適用したいと考えるプロセス技術に向かって走り、気付いたら列の後ろに並んでいた』というような状況に陥ることは避けたい」とも述べた。
同社はここ数週間で人員を60人から70人に増やしており、Iyengar氏はこれが今後6〜9カ月で150人になると予想している。2018年にカナダで設立されたUntether AIは、カナダのトロントとウォータールーで事業を展開しており、これまでに1億5200万米ドルの資金を調達している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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