絶縁型DC-DCコンバーター回路技術を開発:磁性体部品に独自の磁性材料を採用
アルプスアルパインは、絶縁型DC-DCコンバーター回路技術「TriMagic Converter」を開発した。磁性体部品に独自の磁性材料「リカロイ」を採用することで、動作周波数を上げずに高い変換効率と小型化を可能にした。
大電力ながら、高い変換効率と小型化を同時に実現
アルプスアルパインは2021年10月、絶縁型DC-DCコンバーター回路技術「TriMagic Converter」を開発したと発表した。磁性体部品に独自の磁性材料「リカロイ」を採用することで、動作周波数を上げずに高い変換効率と小型化を可能にした。
絶縁型DC-DCコンバーターは、電力は小さいが部品点数が少なく小型化できる「ON-OFF型」と、大電力に対応できるが部品点数も多く大型サイズとなる「ON-ON型」に大別される。車載向けは負荷が1kW以上となるため、ON-ON型が採用されてきたという。
新たに開発した絶縁型TriMagic Converterは、トランスと共振コイルの磁性体部品に、従来のフェライトではなく、低透磁率で高い飽和磁束密度、低損失といった特性を有する「リカロイ」を採用した。ON-ON&ON-OFF型動作モードの回路に活用することで、出力が3.3kWの大電力において、ピーク時に96.8%という高い変換効率を実現することが可能となった。しかも、磁性体部品の合計サイズは従来方式に比べ3分の1に小型化することができるという。
開発した回路は、同じ特性を持つトランス2個と、ZVS(ゼロボルトスイッチング)用共振コイル1個で構成されている。トランジスタから電流を入力すると2個のトランスが交互に「ON-ON」と「ON-OFF」の動作を繰り返す仕組みだ。いずれの動作時も入力側からのエネルギーを、トランスが出力すると同時に蓄える動作も行う。これによって、磁束密度の上昇は通常のON-OFF型の約半分になるという。しかも、整流を担う平滑コイルが不要となる。
同社は、「リカロイ」を用いた磁性体部品のサンプル供給を2022年4月より始める。市場における性能評価などを経て、2023年10月をめどに「リカロイ」を用いた磁性体コアやトランス、共振コイルなどを製品化する計画である。
なお、開発した絶縁型「TriMagic Converter」の機能性評価用DC-DCコンバーター試作機を、「名古屋オートモーティブワールド2021」(2021年10月27〜29日に名古屋市国際展示場で開催)のアナログ・デバイセズブースに出展中。
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