東芝が3社に分割へ、デバイスとインフラサービスを分離:2023年度下期までを目標に(2/2 ページ)
東芝は2021年11月12日、東芝本体からデバイスとインフラサービスの両事業をそれぞれ分離し、計3つの独立会社に分割する方針を発表した。東芝本体は東芝テックとキオクシアホールディングスの株式を管理する会社となるが、キオクシアの株式については、約40%保有する全株を売却する予定だ。同社は2023年度下期までに2つの新会社の独立および上場完了を目標としている。
デバイス、インフラカンパニーの基本戦略/投資計画
同社は今回、分離する2つの独立会社の基本戦略についても紹介した。
まず、インフラサービスカンパニーでは、「顧客やパートナーの意欲的なサステナビリティ目標の実現を支援する」と説明する。AI(人工知能)、セキュリティ、プラットフォーム技術との融合を、エネルギー分野とインフラ分野の「成長の鍵」と捉え、「エネルギー×デジタル」「インフラ×デジタル」といった形で、サイバーフィジカル技術を活用したソリューションを提供するビジネスへと転換する方針だ。同社は、顧客やパートナーと密接に連携することで国内トップクラスの地位を確立し、アジアを中心にグローバル市場シェアの拡大を目指すとしている。
このインフラサービス領域では2021〜2023年度の3年間で設備投資、研究開発、M&Aで計4830億円の資源投入を予定している。売上高は2021年度の2兆900億円から2023年度には2兆2300億円と年平均成長率(CAGR)3.3%の成長を見込んでおり、営業利益は2023年度には1150億円、ROIC(投下資本利益率)は10%とする計画だ。
デバイスカンパニーは、「半導体/ストレージ事業を通じて社会インフラ、情報インフラの進化をリードする」と説明。顧客との関係、長年にわたる技術開発の経験、生産能力の構築などを強みとし早いビジネスサイクルにフォーカスしながら事業拡大を図っていく。
このうちパワー半導体分野では、300mmウエハーラインやSiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)の開発など、成長市場に積極的に投資し、「機器や社会インフラの電力効率の改善を加速させていく」という。パワー半導体分野の売上高は2021年の950億円から2023年度には1200億円と、CAGR13%の成長を目指す。
ストレージ分野については、「社会のデジタル化、情報インフラの進化によるデータセンターの需要拡大に大幅な成長が見込まれている」と説明。ニアラインHDDは、キーコンポーネントの開発協業によって専門領域の先行開発と生産性向上を図り、大容量製品の開発を加速。同時にデータセンター顧客へのサポート体制も強化する。ストレージ事業のニアラインHDDの売上高は、2021年度の2000億円から2023年度には2800億円とCAGR18%の伸び率を見込む。
デバイスカンパニー全体の資源投入は2021〜2023年度までに計3410億円を予定している。内訳は、300mmウエハーラインの新設および200mmウエハーラインの増産対応のほか、SiC/GaN半導体開発設備の能力増強および大口径化、ニアラインHDDの供給能力の増強などの設備投資に1880億円。シリコンパワー半導体のラインアップ拡充や高効率パッケージ開発、高耐圧SiC開発やGaN製品化加速、ニアラインHDDの新機種の開発および次世代マルチビーム機開発などの研究開発費に1530億円となっている。
今回の計画は、東芝取締役会傘下で独立社外取締役5人により構成される戦略委員会が5カ月近くにわたって戦略的選択肢を評価、検討して策定したもので、取締役会にて全会一致で承認されたという。なお、同社は、「当社取締役会の戦略委員会による、 スピンオフ計画に至るプロセスについての株主の皆様へのアップデート」として、同計画に至るプロセスのタイムラインおよび経緯を公開している。
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