Sivers Semiconductors、5Gミリ波新興MixCommを買収:60GHzまであらゆる周波数をカバー
スウェーデンの半導体メーカーSivers Semiconductorsは最近、新興企業のMixCommを買収した。それにより、ポートフォリオを拡大して5G(第5世代移動通信)ミリ波デバイスを実現できるようになった他、無線周波数/ビームフォーミング回路や SiGe(シリコンゲルマニウム)、RF-SOIといった技術を獲得することができた。
スウェーデンの半導体メーカーSivers Semiconductors(以下、Sivers)は最近、新興企業のMixCommを買収した。それにより、ポートフォリオを拡大して5G(第5世代移動通信)ミリ波デバイスを実現できるようになった他、無線周波数/ビームフォーミング回路や SiGe(シリコンゲルマニウム)、RF-SOIといった技術を獲得することができた。
「注目すべき半導体新興企業」が身売りした理由
MixCommは、米国EE Timesの「Silicon 100 startups to watch in 2021(対訳:2021年に注目すべき半導体新興企業100社)」に含まれていた。同社はSiversによる買収額について、商業的なマイルストーン次第では1億3500万米ドルから1億5500万米ドルの価値になると述べた。初期の支援企業だったKairos Venturesによる1億1600万米ドルの投資に対して、10倍以上のリターンになる。
Siversが獲得したIP(Intellectual Property)ポートフォリオには、免許不要帯(アンライセンスバンド)の5G、免許帯(ライセンスバンド)の5Gインフラ、固定無線アクセス、衛星通信などさまざまなミリ波のユースケースも含まれている。この取引により、MixCommのアンテナインパッケージ技術をより多くのミリ波アプリケーションに適用するための組み合わせも実現される。
MixCommのCEO(最高経営責任者)であるMike Noonen氏は「両社の技術と製品は極めて補完関係にある。われわれは、最大60GHzまでのあらゆる周波数をカバーするようになる。5Gミリ波が今後どのように展開しようとも、Siversはそれに対処していく。周波数という観点だけでなく、デバイスの種類という観点からも完全なオファーになるだろう」と述べた。
Noonen氏には、IPO(新規株式公開)と買収の実績がある。同氏は「リーンスタートアップ(lean-startup)」と呼ばれるモデル(起業の方法)を重視し、複数のパートナーと連携してきた。Noonen氏は以前インタビューの中で、MixCommの社員数が20人であることに言及しながら「われわれは質素だが、影響を与えようとしている」と述べた。リーンスタートアップのアプローチでは、製品開発と顧客を取り込むためのパートナーシップを優先する。例えば、GLOBALFOUNDRIESとの協業により、MixCommは市場けん引力を得ることができた。
では、それほどにうまくいっていたのに、なぜSiversに“身売り”したのだろうか?
Noonen氏は「この(買収の)道に進むのを決めたことの重要な側面は、規模を獲得し、双方の足跡を活用することである。有効市場は拡大しており、買収はバランスが取れている。私は、グローバルな規模を手にしたときに何ができるかを目にしてきた。この取引によって、5Gミリ波が大きな市場になることも肯定される」と述べた。
今回の買収により、Siversはデザインウィンを約70%増の44件に増やした他、今後12カ月以内に大量生産に入ることが見込まれるデザインウィンの数は倍増した。MixCommには現在、主要なティア1の5Gインフラ関連の顧客を含め、18件のデザインウィンがある他、潜在的な新顧客の重要なパイプラインも有している。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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