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半導体不足、2022年クリスマスも「完全には解決しない」Arm CEO「忍耐強く、協力し合い、投資を」(2/2 ページ)

ArmのCEO(最高経営責任者)を務めるSimon Segars氏は、ポルトガル リスボンで2021年11月1〜4日に開催された「Web Summit 2021」において、世界的な半導体不足について語り、注目を集めた。同氏は、半導体業界の健全性については楽観視しながらも、現在の危機的な状況を解決するまでにはまだ時間がかかる見込みだとしている。

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エコシステムの全プレーヤーで「より優れた協業体制を」

 このような危機的状況から抜け出し、将来的に同じような状況が発生するリスクを最小限に抑えるためには、エコシステムの全てのプレーヤーたちの間で協業体制を向上させることが最も重要である。

 「サプライチェーンの全てのプレーヤーの間で、より優れた協業体制を構築する必要がある。そのためには、ボトルネックを確実に把握し、サプライチェーンの回復力を着実に高めながらうまく機能させることが求められる。しかし、今回のパンデミックが明らかに他とは異なる『ブラックスワンイベント』(連鎖反応を引き起こす予期せぬ事象)だったように、何か問題が発生した場合、回復が非常に困難になる」(Segars氏)

 同氏は、「短期的には、現在または将来的な投資によってサプライチェーンの問題が軽減されるだろうと楽観視しているが、それと同時に、過剰な期待を抱かないようにすべきだ」と警告する。また、「今後数年間で、生産能力を拡大したり新しい製造施設を建設したりするために、1週間当たり約20億米ドルの資金が投入される見込みだ。これにより、今後5年間で生産能力が約50%増加するとみられる」と述べている。

 問題は、こうした生産能力をどこに追加するのかという点だ。現在では、半導体生産の大半をアジアに依存しているため、どこか他の場所で生産能力を増強し始めるべきだとする声が多い。しかし、アウトプットのビルディングブロックであるウエハーのサプライチェーンは、過度に集中しているため、新たにウエハー生産能力を立ち上げることは、非常に難しい課題となっている。Segars氏は、「このような材料や膨大な化学物質の周辺には、全体的なエコシステムが存在する。つまり事実上、半導体の製造において使われる周期表全体が対象となる。下流の工場へ供給するためには、工業用の非常に純度が高い化学物質が必要となる。さらにそれらを試験、パッケージングし、出荷する必要がある。このようなサプライチェーンの問題に対応するためには、単なる半導体工場を超える存在であることが求められる」と述べる。

 KneronのCEOを務めるAlbert Liu氏は、Segars氏の見解に同意している。Kneronは、車載用のエッジAI(人工知能)や機械学習チップセットの設計開発を手掛ける半導体メーカーだ。

 Liu氏は、今回のイベントの中で米国EE Timesのインタビューに応じ、「最大の問題は、主に北米市場からの需要が急増していることにある。また自動車が売れ始めるようになると、一部の自動車メーカーは、納品できないことにいら立ち、自らの優先順位を高めようと、価格の上乗せを提示して発注を重複させる。すると工場では、製造ラインの設備を一新するのに時間がかかることから、製造計画において重大な問題が発生する。原材料の調達が難しくなったり、パンデミックが原因で輸送能力が低下したりするなど、別の問題が生じるのだ」と述べている。

2022年末、状況は改善と予測も……

 Segars氏は、「2022年のクリスマスは、プレゼントを贈る側にとって、状況が大きく改善されるだろう。しかしそれでも、早い時期から買う物を検討し始める方が良い。また、製品価格もまだしばらくの間は下がらないとみられる」と語った。

 また、「重要なのは、忍耐強く協力し合い、投資することだ」とも言及。「2022年のクリスマスはどうなっているだろうか。サプライチェーンの制約は、少しは改善されると思うが、完全には解決しないだろう。なぜなら、これは短期的な問題でも、短期的な解決策があるわけでもないからだ。今後何十億米ドルをも費やしていく必要がある。今日の決断が、今後10年間の生命線である重要な材料、半導体の供給に影響を与えることになるのだ」と語った。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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