QorvoがUnitedSiCを買収、SiC開発競争の最中に:多様化戦略を展開へ(2/2 ページ)
Qorvoが、米国ニュージャージー州プリンストンに拠点を置くSiC(United Silicon Carbide)パワー半導体メーカーUnitedSiCを買収した。QorvoはこのUnitedSiC買収により、現在急速な成長を遂げている、電気自動車(EV)や産業用電力制御、再生可能エネルギー、データセンター用パワーシステムなどの市場へと対応範囲を拡大していくことになる。
成長を続けるSiC、「近い将来、IGBTから大部分のシェア奪う」
SiC市場は現在、成長の一途にある。急激な成長は、低コスト化を促進する。Dries氏は、「われわれは最近、第4世代のデバイスを発表したところだ。ダイサイズを30〜50%縮小した他、ソリューションの大幅な低コスト化も実現している。このため、SiCインバーターが実現する効率性のメリットについて検討する場合に、なおのことそのチャンスについて考えるべきではないだろうか。私の見解としては、SiCはこの先10年後に、特にハイパワーモデルの自動車分野において優位性を確立し始めるのではないかとみている」と述べる。
またBriggs氏は、「IGBTは今後も存在し続け、SiCに簡単に道を譲るようなことはないだろう。しかし最終的に、SiCはその効率性と性能、信頼性によって成功を収め、近い将来、大部分のシェアを獲得するとみられる」と付け加えた。
UnitedSiCによると、こうした理由から、優れたサプライチェーンを確保することが重要であり、また基板とエピタキシーの供給の多様化を実現することで、市場リーダーシップを確立できるようになるという。Dries氏は、「われわれは、さまざまなエピタキシーサプライヤーと基板サプライヤーとの間で、正規のサプライチェーンを5つほど確保している。この中で競争が起こることにより、十分なコストダウンを実現できている」と述べる。
今後非常に重要になるのが、参照設計ソリューションを確保することによって、シンプルな設計チャンスを提供し、市場投入までの期間を短縮できるようにすることではないだろうか。これにより、IGBTソリューションだけを使うことに慣れてしまっている全ての設計者向けに、SiCの普及を加速させることができる。参照設計は、Qorvoの既存のエンジニアリング能力を活用する上で非常に優れた手法だ。また、Briggs氏が言うように、ディスクリート半導体だけでなく、完全な統合ソリューションを提供することは、成長していく上でのチャンスとなるだろう。
Dries氏は、「われわれは現在、ソーラーインバーターの開発に取り組んでいるところだ。SiCは今後、ソーラー設備だけでなくエネルギーストレージシステムの中心部になるとみられる」と述べている。
またBriggs氏は、「われわれが今後注目すべきは、エネルギー効率の観点からどのようなサポートを提供できるのかという点だ。全ては効率化と最大化の方法の問題であり、われわれの技術と組み合わせることにより、市場向けにもっと優れたソリューションを提供するための方法を見いだせるようになるだろう」と述べる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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