第4世代HD-PLC準拠の電力線通信モジュール試作:最大10kmの通信距離を可能に
シキノハイテックとソシオネクストは、電力線通信技術「HD-PLC」の第4世代規格「IEEE 1901-2020」に準拠した電力線通信モジュール「P-TMFSU-041」を試作し、その動作を確認した。2022年度の商品化を目指す。
IEEE 1901-2020準拠のLSIを通信モジュールに搭載
シキノハイテックとソシオネクストは2021年12月、電力線通信技術「HD-PLC」の第4世代規格「IEEE 1901-2020」に準拠した電力線通信モジュール「P-TMFSU-041」を試作し、その動作を確認したと発表した。2022年度の商品化を目指す。
ソシオネクストは、IEEE 1901-2020に準拠したLSI「SC1320A」を開発した。パナソニックよりライセンス供与されたIEEE 1901-2020準拠のIPコア「HD-PLC4」を内蔵している。SC1320Aは、消費電力が200mWと小さく、外形寸法が7×7mmの小型パッケージでサンプル供給している。
P-TMFSU-041は、このSC1320Aを搭載した電力線通信用モジュールである。データの暗号機能に加え、モジュール間の伝送路状態を動的に判別する機能なども備え、高いセキュリティ性を実現している。通信モジュールの外形寸法は40.0×20.0×5.9mmである。利用する周波数帯域は2〜28MHzで、1/4モード使用時の通信距離(10ホップ)は約10kmとなっている。
P-TMFSU-041を用いると、電力線など既設の配線を活用して高速データ通信が可能となる。しかも、長距離通信に対応できることから、工場やビル、建設現場などへの導入を提案していく。
IEEE 1901-2020は、利用する通信帯域によって、「標準モード」の他、「長距離モード」や「高速モード」に対応することができる。標準モードでの通信速度は250Mビット/秒だが、利用する通信帯域を標準モードから2段階で1/2や1/4に縮小すれば、通信距離を最大で約2倍に延ばすことができる。マルチホップ機能を活用すると、最大1024ノードのネットワークを構築することが可能である。一方、高速モードでは、通信帯域を標準モードの4倍に広げれば、最大1Gビット/秒(物理速度の理論値)という高速通信を実現できるという。
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