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シリコンダイを直接水冷する次世代放熱技術の実力福田昭のデバイス通信(342) TSMCが開発してきた最先端パッケージング技術(15)

今回は、3種類の放熱構造で冷却性能を比較した結果を紹介する。

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シリコンダイの表面積拡大が冷却性能を強化

 高性能プロセッサとその関連技術に関する国際学会「Hot Chips」が昨年(2021年)8月22日〜24日にオンラインで開催された。「Hot Chips」は高性能プロセッサの最新技術情報を入手できる貴重な機会として知られている。会期は3日間で、初日が「チュートリアル(Tutorials)」と呼ぶ技術講座、2日目と3日目が「カンファレンス(Conference)」と呼ぶ技術講演会となっており、講演会とは別にポスター発表の機会も用意される。オンライン開催となったことしは、あらかじめ録画されたビデオをプログラムに沿って公開する形式となった。参加登録者は開催後も一定の期間は、オンデマンドで講演を聴講できる。

 初日の「チュートリアル(Tutorials)」では、13件の講演が実施された。その中で「先進パッケージング技術」に関する講演「TSMC packaging technologies for chiplets and 3D(チップレットと3次元集積に向けたTSMCのパッケージング技術)」が極めて興味深かった。講演者はTSMCで研究開発担当バイスプレジデント(現在はシステム集積化手法開発担当バイスプレジデント)をつとめるDouglas Yu氏である。

 そこで本講演の概要を第328回から、シリーズでお届けしている。なお講演の内容だけでは説明が不十分なところがあるので、本シリーズでは読者の理解を助けるために、講演の内容を適宜、補足している。あらかじめご了承されたい。


講演「TSMC packaging technologies for chiplets and 3D(チップレットと3次元集積に向けたTSMCのパッケージング技術)」のアウトライン。前々回から3番目のパート「New Heterogeneous Integrations」の講演部分を説明している[クリックで拡大] 出所:TSMC(Hot Chips 33の講演「TSMC packaging technologies for chiplets and 3D」のスライドから)

 前々回から、異種のデバイスを集積化する技術に関する講演(「New Heterogeneous Integrations」)部分の紹介を始めた。講演で説明した技術は2つある。最初が放熱(冷却)技術、次がシリコンフォトニクス技術となる。前回では、3次元積層モジュール「SoIC」に向けた高性能冷却技術「ISMC(Integrated Si Micro-Cooler)」の概要と、放熱用シリコンダイの表面加工が冷却性能を大きく左右することを述べた。具体的には、シリコンダイの表面に角柱のアレイを形成し、その間に冷却水を通すことで放熱性能を大幅に高められることを確認した。

 今回は、回路用シリコンダイ(実際には回路を形成したと仮定したシリコンダイ)と放熱用シリコンダイを積層する構成(放熱構造)の違いにより、熱抵抗がどのくらい変化するかを測定した結果を説明しよう。

3種類の異なる放熱構造で冷却性能を比較

 実験では、おおよそ3種類の放熱構造を用意した。(1)回路を形成した(と仮定した)シリコンダイ(TTV:Thermal Test Vehicle)と、放熱用シリコンダイ(Si Lid)を液体金属(LM:Liquid Metal)のTIM(Thermal Interface Material)を介して接続した構造(略称:LMT)、(2)回路を形成したシリコンダイ(TTV)と放熱用シリコンダイ(Si Lid)を、シリコン酸化膜(OX)のTIMを介して接続した構造(略称:OX TIM)、(3)回路を形成したシリコンダイ(TTV)の表面に角柱アレイを形成した構造(略称:DWC(Direct Wafer Cooling))、である。いずれの構造も、回路動作による発熱を模擬するヒーター(BEOL Heater)をTTVの表面に作り込んだ。


実験に使用した3種類の放熱構造。左は、回路を形成した(と仮定した)シリコンダイ(TTV:Thermal Test Vehicle)と放熱用シリコンダイ(Si Lid)をシリコン酸化膜(OX)のTIM(Thermal Interface Material)を介して接続した構造(略称:OX TIM)、右上は回路を形成したシリコンダイ(TTV)の表面に放熱用の角柱アレイを形成した構造(略称:DWC(Direct Wafer Cooling))、右下は回路を形成したシリコンダイ(TTV)と放熱用シリコンダイ(Si Lid)を液体金属のTIMを介して接続した構造(略称:LMT)。いずれも底面にヒーターを作り込んでいる[クリックで拡大] 出所:TSMC(2021 VLSI Technology Symposiumの講演「Ultra High Power Cooling Solution for 3D-ICs」(講演番号JFS1-4)のスライドから)

回路用シリコンダイ(実際には回路を形成したと仮定したシリコンダイ)「TTV:Thermal Test Vehicle」の概要。配線工程を利用して銅(Cu)のヒーターとCuベースの測温抵抗体(RTD:Resistance Temperature Detector)を作製した。シリコンダイ面積は780mm2、ヒーター部分の面積は540mm2とかなり大きい[クリックで拡大] 出所:TSMC(2021 VLSI Technology Symposiumの講演「Ultra High Power Cooling Solution for 3D-ICs」(講演番号JFS1-4)のスライドから)

500mm2を超える大面積の高性能チップでキロワットを許容

 これら3種類の放熱構造を治具に組み込んで、冷却水の流量を変えて熱抵抗(ここでは熱伝達係数の逆数)を測定した。冷却水の流量は2リットル/分と5.8リットル/分、冷却水の温度は25℃である。

 同じ流量で比較すると、熱抵抗の高い順から、(1)の構造(LMT)、(2)の構造(OX TIM)、(3)の構造(DWC)となった。現時点で実用的な構造は「LMT」と「OX TIM」であり、「OX TIM」の熱抵抗が低い。シリコンダイ面積が500mm2を超える大規模な高性能チップに「OX TIM」の放熱構造を追加することで、キロワット(kW)級の消費電力を許容できるようになるとする。


3種類の放熱構造で熱抵抗を測定した結果[クリックで拡大] 出所:TSMC(Hot Chips 33の講演「TSMC packaging technologies for chiplets and 3D」のスライドから)

 なお、最も熱抵抗の低い「DWC」は、回路を形成したシリコンウエハーの裏面を機械加工(ダイシングソーによる加工)することになる。回路の動作速度や信頼性などへの影響を精査する必要がある。このためDWCは、さらに将来に向けた技術と位置付ける。

⇒(次回に続く)

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