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シリコンフォトニクス技術「COUPE」の電気的な性能福田昭のデバイス通信(345) TSMCが開発してきた最先端パッケージング技術(18)(2/2 ページ)

前回に続き、TSMCが考えるPE(Photonic Engine)の実現方法「COUPE(COmpact Universal Photonic Engine)」を紹介する。今回は、「COUPE」の電気的な性能をシミュレーションした結果をご報告する。

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等価回路モデルによって従来技術とCOUPEの電気的な性能を比較

 PEの性能には、電気的な性能と光学的な性能がある。電気的な性能は、EICとPICをつなぐ電気的なインタフェースの損失によって左右される。光学的な性能は、光ファイバとPICをつなぐ光結合の損失によって大きく変化する。


フォトニクスエンジン(PE)の等価回路モデル。EICとPICのインタフェースによる寄生容量と電源ネットワークのインピーダンス(PDN(Power Delivery Network)インピーダンス)、PEの送信ビット当たりの消費エネルギーをシミュレーションした[クリックで拡大] 出所:TSMC(ECTC2021の発表論文「Heterogeneous Integration of a Compact Universal Photonic Engine for Silicon Photonics Applications in HPC」から)

 電気的な性能はPEの等価回路によってシミュレーションした。EICチップとPICチップを3次元積層してマイクロバンプ接続した構造を従来技術とし、「COUPE」と比較した。なおCOUPEの構造は詳細を明らかにしていない。

寄生容量85%減、電源インピーダンス51%減を実現可能

 始めは、EICとPICのインタフェースによる寄生容量をシミュレーションした結果である。従来技術ではインタフェースの接続ピッチ(マイクロバンプのピッチ)が25μm〜50μm前後とかなり広い。COUPEではインタフェースの接続ピッチが10μm未満と狭く、寄生容量は従来技術の15%程度とわずかにとどまる。なお接続ピッチの数値から、COUPEではハイブリッド接合によってEICとPICを3次元積層している可能性が高いと筆者は推測する。


電気的な性能のシミュレーション結果(その1)。左はEICとPICのインタフェースによる寄生容量。右は電源ネットワーク(PDN)のインピーダンス[クリックで拡大] 出所:TSMC(Hot Chips 33の講演「TSMC packaging technologies for chiplets and 3D」のスライドから)

 次は電源ネットワーク(PDN:Power Delivery Network)のインピーダンス(PDNインピーダンス)をシミュレーションした結果を示す。従来技術の電源ネットワークには2種類あり、1つはワイヤボンディング(ワイヤ長500μm)によってEICに電源を供給した構造、もう1つはシリコン貫通ビア(TSV:Through Silicon Via)によってEICに電源を供給した構造である。TSVの長さは100μmとした。

 PDNインピーダンスは最大値で比較した。 COUPEの最大インピーダンスはワイヤボンディングと比べて92%減少し、TSVと比べて51%減少した。COUPEはインピーダンスのピークが小さく、電源電圧を安定化できることが分かる。

送信ビット当たりの消費エネルギーを40%低減

 最後は送信ビット当たりの消費エネルギーである。伝送速度との関係を従来技術と比較した。同じ伝送速度だと従来技術に比べて消費エネルギーは40%減少し、同じ消費エネルギーだと従来技術に比べて伝送速度が1.7倍に向上する。


電気的な性能のシミュレーション結果(その2)。送信ビット当たりの消費エネルギーと伝送速度の関係[クリックで拡大] 出所:TSMC(Hot Chips 33の講演「TSMC packaging technologies for chiplets and 3D」のスライドから)

(次回に続く)

⇒「福田昭のデバイス通信」連載バックナンバー一覧

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