東芝は“2分割”に、半導体デバイス事業のみ分社へ:非注力事業の売却も発表(2/2 ページ)
東芝は2022年2月7日、2021年11月に発表した“3社分割案”を大幅に修正すると発表した。当初、東芝本体からデバイスとインフラサービスの事業をそれぞれ分離し、独立した3つの企業に分割する方針だったが、インフラサービス事業は本体に残してデバイス事業のみを分離する、“2社分割案”を提示した。
非注力事業の空調などは売却へ
注力領域との関係性が高い分野に経営資源を集中させるべく、事業を「注力」「非注力」に特定し、非注力事業については売却など外部化していく方針も示した。具体的には、空調、昇降機、照明、東芝テックが担うリテール/プリンティングを非注力事業とした。空調を手掛ける子会社である東芝キヤリアについては、7日に売却を発表。東芝が保有する発行済み株式60%のうち55%を米Carrierに約1000億円で譲渡する。
「空調、昇降機、照明においては足元のROIC(投下資本利益率)は比較的高水準で推移しており、安定した収益基盤も有している。だが、今回の中期経営計画で選択した注力領域との関連性が低く、これらの事業を東芝本体に残したままでは、中長期の成長が限定される。加えて、それぞれの事業が置かれた市場環境や産業構造を踏まえると、さらなる成長と強化のために、マジョリティ株主として積極的な支援を行う外部資本を導入するとともに価値の顕在化を行うことが最善であると判断した」(綱川氏)。ただし、これらの事業と東芝/インフラサービスCo.との協業関係は今後も継続していくとした。
投資は増額
2社分割後の売り上げ規模については、2023年度3月期において、東芝/インフラサービスCo.の売上高が1兆5400億円規模、デバイスCo.が8600億円規模と説明した。
事業計画としては、東芝/インフラサービスCo.の売上高は、2021年度の1兆5200億円から2025年度は1兆8700億円、営業利益は同540億円から、2025年度には1200億円を目指す。デバイスCo.については、売上高は2021年度の8600億円から2025年度は1兆円超、営業利益は同550億円から2025年度には800億円を目指す。
2021年度〜2025年度の累計投資額は、東芝/インフラサービスCo.が9140億円、デバイスCo.が6000億円。両事業とも、2016年度〜2020年度に比べて増額を計画している。
併せて2021年度見通し業績の修正についても言及した。それによると、売上高は3.34兆円で前回の公表値から100億円の減収の見通し。半導体不足およびCOVID-19の影響が長引いていることによるものとした。営業利益は1550億円で、こちらも前回公表値に比べて150億円の減益の見通しとなっている。素材の高騰などが原因とした。営業外損益は、キオクシア持分法投資損益などにより前回公表値から+400億円の500億円。これらにより、純利益は前回公表値から+200億円となる1500億円との見通しを発表した。
さらに東芝は、キオクシアに対し、「経営に関する権利はない」としつつ、できるだけ早期のIPO(新規公開株式)を正式に要請したことを明らかにした。
東芝グループの技術戦略も発表。東芝で執行役上席常務CTOを務める石井秀明氏は、研究開発費の売上高比率は5.5%以上に高め、2021年度〜2025年度において累計7000億円を投資すると述べた。
AI(人工知能)技術やIT、セキュリティ、ソフトウェア、製造技術といった共通基盤と、量子技術や材料技術、AI技術など先端技術を製品開発と連携し、製品/サービスの競争力を強化する。先端技術の開発事例として、量子/疑似量子技術や、ペロブスカイト太陽電池、水系リチウムイオン二次電池を挙げた。
戦略の詳細は、2022年2月8日に開催される東芝IR Dayの2日目で発表される予定だ。
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