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既に自家用車の9割、ノルウェーでEV導入が進んだ背景グリーンエネルギー先進国(2/2 ページ)

ノルウェーは、内燃機関自動車(ICEV)から電気自動車(EV)への移行が最も進んでいる国の1つだ。2022年初頭の時点で、自家用車の月間売上高全体に占めるEVの割合が90%を超えており、その大半がバッテリーEV(BEV)だったという。本記事では、なぜこのような状況に至ったのか、その理由について考察していきたい。

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EV購入に対する強力な奨励策

 ノルウェーは、1990年代初頭というかなり早い段階から、EV購入の奨励策を始動している。ただ、当初はEVの種類や各種機能に限りがあり、大半の消費者の要望には対応できていなかったため、その影響は小さいものだった。それでも、2012年にノルウェー国内のEV利用台数は1万台に達し、急速に増加していく。

 その最も重要なEV奨励策としては、ほぼ全てのEVの購入価格が、同等性能のICEVと比べて安価になるという、大きな割引が3つある。まず1つ目は輸入税で、ブランドやモデルによってはその割引額が数千米ドルに達する。EVは2001年以降、25%の付加価値税が免税されているため、購入者は通常、6000〜1万米ドルを節約することが可能だ。

 またノルウェーでは、ICEVの二酸化炭素および窒素酸化物の排出量に対する追加料金として、ほとんどのガソリン/ディーゼル車に5000米ドル超というかなりの金額が課されている。この他にもさまざまな使い方による節約法として、年間道路税や、有料道路の料金やフェリーの料金などが大幅に割引される。ただし、年間道路税が2022年中に終了予定であるのをはじめ、その他の割引も段階的に廃止されていくという。

 ノルウェーはこのようなEV奨励策により、国内でEVを普及させることに成功した。しかし、今後5年間で多くの奨励策が廃止される予定だ。引き続きICEVの置き換えを推進していくためには、ガソリン/ディーゼル車に対し、EVの販売価格の競争力を維持していくことが重要な鍵となる。

 長期的にみると、EVにとって最大の奨励策となるのは、燃料コストの削減である。ノルウェーのガソリン価格は、1ガロン(約3.8L)当たり6〜7米ドルである。また、1KWh当たりの平均電気料金は10セント未満だ。バッテリーの1KWh当たりの走行距離は3〜4マイル(約4.8〜6.4km)であるため、ノルウェーでは1米ドルの電気で30〜40マイルの走行が可能であるということになる。30MPG(マイル/ガロン)のICEVの場合、1米ドルのガソリンで5マイルしか走行することができないのだ。これは、EVへの切り替えを進める上で、たとえEVの使用コスト面でのメリットが少ないとしても、非常に有効な議論だといえるだろう。

ノルウェーにおけるEVの位置付け

 IHS Markitのデータによると、ノルウェーの人口は約550万人で、現在使用中の小型自動車数は約340万台であるため、自動車保有率は1000人当たり625台だという。

 ノルウェーのEV保有台数は、2021年末の時点で65万台に達し、1000人当たりでは115台となる。EV保有台数全体のうち、BEVが73%を占める。EVが全てのICEVを置き換えるためには、さらに220万台増加させて1000人当たり400台という“EVの飽和状態”に達する必要があるが、それにはまだ長い期間を要するだろう。

 ノルウェーでは2021年に、プラグイン電気自動車(PHEV)の売上台数が12万台に達し、自動車販売台数全体の86%のシェアを獲得した。その他は、非PHEVが全体の5.5%、ディーゼル車が4%、ガソリン車が4.3%をそれぞれ占めている。

 EV全体では、BEVが75%を占め、PHEVが残りの25%を占める。PHEVについては、その奨励策が2022年に入ってから縮小されたため、同年初頭のシェアは減少した。2022年1〜2月のEV売上高が増加する中で、EVのシェアは拡大し、ICEVのシェアが縮小するという傾向が広がっている。

他国もノルウェーに続けるか

 ノルウェーでBEVへの迅速な移行が進んだ背景には、他の国にはあまり見られない理由が1つある。それは、ノルウェーの発電では既に、環境配慮型の再生可能エネルギーが全体の約95%を占めているという点だ。このため輸送業界が温室効果ガス排出量を削減の焦点となった。それは、ノルウェーにとって非常に効果的だった。

 ノルウェーは引き続き、EVベースの輸送手段として、ボートをはじめ、特にフェリーの電動化に注力していく考えだという。現在既に、試験や導入が進んでいる。また、短距離飛行機も計画しているようだが、まだ先になるとみられる。

 ノルウェーでは過去5年間で、EV売上高が急激に増加し、2021年には個人用自動車の売上高全体の86%に達した。ICEVの売上高は、全体のわずか8.3%にとどまる。2022年1〜2月も、このような傾向が続いている。

 ノルウェーのEV購入奨励策では、ほとんどのEVモデルが、同等性能のICEVモデルよりも安価になる。これは、たとえEVの輸入価格の方がはるかに高額な場合でも適用される。これこそが、ノルウェーがEVで大きな成功を収めている重要な要因だといえる。

 また、ノルウェーがEVの成長を維持していく上で、もう1つの重要なアドバンテージとなっているのが、EVの使用コスト、特に動力用の電気である。1米ドル当たりの走行マイルは、現在のノルウェーのガソリン/電気価格をベースとした場合、BEVが30マイルであるのに対し、ICEVは約5マイルだ。

 他の国々も、ノルウェーと同様の戦略で成功を収められるのだろうか。筆者としては、成功するだろうと考えている。なぜなら、現在BEVの価格が急激に下がっているため、ノルウェーが取り組みを開始した当初ほどの奨励策はそれほど必要ではないからだ。また、BEVのポートフォリオははるかに拡大しており、より多くの購入者のニーズを満たすこともできる。BEVベースのピックアップトラックやバンが注目を浴びているのをみればわかるだろう。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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