TSMC、需要見通し悪化で2022年の設備投資計画を縮小:通年の成長率は30%台半ばと予測
TSMCは、生産能力の拡張に向けて2022年中に400億米ドル以上を投じる計画だったが、その計画を縮小した。PCおよび家電セグメントの在庫削減が予想され、需要の見通しが悪化したためである。
在庫調整、「2023年前半まで続く可能性」
TSMCは、生産能力の拡張に向けて2022年中に400億米ドル以上を投じる計画だったが、その計画を縮小した。PCおよび家電セグメントの在庫削減が予想され、需要の見通しが悪化したためである。
同社は3カ月前、2022年の設備投資額は440億米ドルに達する可能性があると予想していたが、7月14日(台湾時間)の四半期決算説明会で、この数字を約400億米ドルに修正した。
TSMCのCEO(最高経営責任者)を務めるC.C.Wei氏は同イベントで、「スマートフォンやPC、消費者向けエンドマーケットセグメントにおけるデバイスの勢いが軟化していることを受け、サプライチェーンは既に行動を起こしており、2022年後半を通して在庫レベルが減少すると予想される。現在の半導体サイクルは典型的なサイクルに似ており、2023年前半まで数四半期にわたって在庫調整が続く可能性がある」と述べている。
TSMCは、AppleからXilinxまで、幅広い顧客向けに半導体を製造している世界トップクラスの半導体ファウンドリーで、エレクトロニクス業界の先駆者である。家電セグメントは減速しているものの、特に現在収益の大部分を占めるハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)セグメントでは、需要に追い付いていない状態が続いており、HPCが同社の長期成長の主な原動力になると期待しているとする。
また、データセンターと自動車関連の需要は依然として堅調で、同社はこれらの分野をサポートするために生産能力を再配分している。TSMCは、生産能力の逼迫は2022年を通して続くと予想しており、通年の成長は米ドルベースで30%台半ばに達すると予測している。
HPCの顧客が性能とエネルギー効率の目標を達成しようとする動きは、TSMCの最先端技術である7nmと5nmプロセスノードに対する需要を促進している。この2つのノードは、合計するとTSMCの第2四半期の売上高の51%を占める。
米国の市場調査会社Gartnerによると、TSMCは最先端の7nmと5nmノードにおいてSamsung ElectronicsやIntelなどファウンドリーのライバルをリードしており、市場の90%以上を占めている。
マクロ経済の逆風は今後も続く可能性があるが、TSMCによると、プロセス技術の移行と機能向上に支えられて、エンドデバイスにおける半導体搭載数は増加している。また、データセンターにおけるCPUとGPU、AI(人工知能)アクセラレーターの数も増加しているという。
装置不足とコスト増
EUV(極端紫外線)リソグラフィ装置などの半導体製造装置の供給不足も、TSMCの生産能力の拡張を制約する要因となっている。
Wei氏は、「当社のサプライヤーはサプライチェーンでより大きな課題に直面しており、先端ノードと成熟ノードの両方で納期が延びている。その結果、2022年の設備投資の一部は2023年にずれ込むと予想している」と述べている。
TSMCはまた、アリゾナでの新しい5nmプロセス工場の建設コストが予想より高くなるとも述べた。
TSMC会長のMark Liu氏は、「この2年間で、米国での人件費が計画よりも高いことがわかった。また、コロナ禍のサプライチェーン分断も予想外のものがあった」と語っていた。
「われわれの米国の顧客は皆、その工場の利用を望んでいる。また、そこには十分なビジネスチャンスがあると信じている。コストは上がっているが、それだけが判断材料ではない。政府の補助金についても取り組んでいるし、われわれはコスト削減の努力も続けていく」(Liu氏)
TSMCは、アメリカの半導体産業の復活を目的とした、520億米ドル相当の補助金パッケージに期待を寄せている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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