リチウム電池材料市場、25年に12兆2312億円規模へ:富士経済が世界市場を予測
電気自動車(EV)や電力貯蔵システム(ESS)などに向けたLIBの需要が拡大する見通しから、リチウムイオン二次電池(LIB)材料の世界市場は、2022年の8兆9094億円に対し、2025年に12兆2312億円規模となる。富士経済が予測した。
電気自動車や電力貯蔵システムなどに向けたLIBの需要が拡大
富士経済は2022年8月、リチウムイオン二次電池(LIB)材料の世界市場を調査し、その結果を発表した。電気自動車(EV)や電力貯蔵システム(ESS)などに向けたLIBの需要が拡大する見通しから、LIB材料の世界市場は、2022年の8兆9094億円に対し、2025年に12兆2312億円規模となる。
今回の調査は、正極活物質や負極活物質、電解液、セパレーターといったLIB材料12品目の他、アルカリ二次電池材料4品目、一次電池材料4品目および、金属資源・出発原料3品目など、合計23品目を対象とした。調査期間は2022年3〜7月である。
LIB市場は、EVを中心とする電動車への移行や、再生可能エネルギーの利用促進に伴うESSの導入などにより、拡大が続く。これに伴い、LIB材料も需要が増加し、2024年には10兆円を突破する見通しになった。
LIB材料市場を製品別にみると、その半数以上を占めるのが「正極活物質」である。その規模は2022年に5兆8353億円になり、2025年は7兆8392億円と予測した。これに続くのが「負極活物質」「電解液」「セパレーター」「負極集電体」などである。
ここで注目したのが、リチウムなど「鉱山資源を調達するルートの変化」である。これまでは、主にLIB材料メーカーが調達してきた。近年は、自動車メーカーによる調達も進んでいるという。また、電池材料メーカーは欧州市場で拠点の新設を検討している。欧州地域におけるEV生産の拡大に対応するのが狙いである。
主な製品別の動向を分析した。「正極活物質」市場は、三元系(ニッケル、マンガン、コバルト)やハイニッケルが中心となる。これに対し中国では、リン酸鉄リチウムの需要が増加しているという。安価で安全性が高いからだ。今後は中国以外の地域でも採用が増えるとみている。
「負極活物質」市場は、急速充電が行われるEV向け電池で、人造黒鉛系の比率が高い。高容量化の要求からシリコン系の利用も拡大しつつあるという。一方、天然黒鉛系は人造黒鉛系に比べ低価格で高容量というメリットがあるが、急速充電による膨張などが課題になっていた。これに対し、日本メーカーなどが低膨張性の天然黒鉛系を開発していて、EV向けでも採用が進むとみられている。
「電解液」市場は、2020年に原料の供給過剰により価格は下落した。ところが、需要自体は拡大が続くとの見通しだ。大手メーカーは供給や品質の点から、欧州における生産拠点の新設や増設に取り組んでいるという。
「セパレーター」市場は、ESSやHVに向けた電池で「乾式セパレーター」が用いられている。これに対し、EV向け電池では容量密度を高めるため、「湿式セパレーター」を採用することが多いという。また、中国大手メーカーを中心に、生産能力の増強や自動化ライン導入による歩留まりの向上なども進んでいる。
今回の調査ではLIB材料の他、アルカリ二次電池材料と一次電池材料についても市場規模を調べた。この結果、2022年は合計9兆3418億円の市場見込みに対し、2025年には12兆7300億円規模に達すると予測した。
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