パナソニックら、超軽量電磁波遮蔽材料を共同研究:アルミに比べ重さは270分の1に
パナソニック インダストリーと名古屋大学、山形大学、秋田大学は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で「超軽量電磁波遮蔽(しゃへい)材料」の研究を始めた。開発する材料は、アルミニウムと同等の電磁波遮蔽性能を有しながら、270分の1という軽さである。2024年の実用化を目指す。
人工衛星やeVTOLの軽量化で、航続可能距離を延伸
パナソニック インダストリーと名古屋大学、山形大学、秋田大学は2022年8月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で「超軽量電磁波遮蔽(しゃへい)材料」の研究を始めた。開発する材料は、アルミニウムと同等の電磁波遮蔽性能を有しながら、270分の1という軽さである。2024年の実用化を目指す。
人工衛星などの宇宙機やドローン、eVTOLといった電動航空機、5G(第5世代移動通信)やそれ以降のモバイル基地局などに用いられる電子材料は、軽量化や高度な電磁波遮蔽の機能が求められている。特に機器の軽量化は、航続可能距離を延ばすことにつながるといわれている。
パナソニック インダストリーらによる研究グループはこれまで、カーボンナノチューブの研究を行ってきた。この内容をさらに発展させるため、2022年6月より超軽量電磁波遮蔽材料の共同研究に乗り出した。
今回の共同研究では、名古屋大学が開発した「カーボンナノチューブを用いた超軽量材料」と、パナソニック インダストリーの「熱硬化性樹脂を配合設計する技術」を組み合わせる。これによって、かさ密度が0.01g/cm3レベルで、電磁波遮蔽性能はアルミニウムと同等の電磁波遮蔽材料を開発していく計画である。ちなみに、アルミニウムのかさ密度は2.7g/cm3であり、大幅な軽量化が可能となる。
開発する材料は、材料の組成を変えることで、遮蔽する電磁波の周波数帯域を調整することが可能だという。このため、利用環境に最適な電磁波遮蔽を実現することができる。しかも、電磁波を吸収する機能も備えており、CPUなどから放出されるノイズの多重反射を防止できるという。
さらに、パナソニック インダストリーが保有する「熱硬化樹脂の配合設計技術」と「フリーズドライ製法」により、応用機器の形状に応じた、さまざまな立体構造を形成することが可能である。
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