広帯域で高インピーダンスを実現、車載PoC用インダクター:小型で大電流対応も
TDKは2022年8月30日、広帯域で高いインピーダンスを実現した小型/大電流の車載PoC(Power over Coax)用積層インダクター「MLJ1608WGシリーズ」の量産を開始したと発表した。従来品より小型ながら定格電流は500mAと高く、300M〜2GHzの広帯域で最大インピーダンス1000Ω以上を実現。先進運転支援システム(ADAS)の普及によって高まるPoCフィルターへの要求に応えている。
TDKは2022年8月30日、広帯域で高いインピーダンスを実現した小型/大電流の車載PoC(Power over Coax)用積層インダクター「MLJ1608WGシリーズ」の量産を開始したと発表した。従来品より小型ながら定格電流は500mAと高く、300M〜2GHzの広帯域で最大インピーダンス1000Ω以上を実現。先進運転支援システム(ADAS)の普及によって高まるPoCフィルターへの要求に応えている。
ADASの普及によって車載カメラの搭載数増が増加し、ワイヤハーネスの増加による車体重量増が課題となっている。そこで、LVDS伝送の車載カメラシステムの映像データ伝送と電力供給を1本の同軸ケーブルで行うことができるPoC化が加速しているが、PoCを適用した場合、映像データ伝送を行う信号ラインが誤って電源へ入ることのないよう、高インピーダンスのノイズフィルターが必要になる。また、車載カメラの高スペック化も進んでいることから、PoCラインは大電流化、高周波化対応も必須となっている。
今回発表したMLJ1608WGシリーズは、通電時のインピーダンス特性劣化を抑制するTDK独自のフェライト材や内部構造設計によって、広帯域で高いインピーダンスかつ大電流への対応を可能にしたとしている。
具体的には、300M〜2GHzの広帯域で1000Ω以上の高インピーダンスを実現。説明担当者は、「既存品のMDF1005シリーズより1000Ω以上取れる帯域が広くなった」と説明している。 また、1608サイズ(1.6×0.8×0.8mm)と小型ながら、定格電流も125℃で400mA、105℃で500mAと大電流に対応、「巻線タイプの従来品(2520サイズや3225サイズ)と比較し、ワンランクもしくは2ランク小型化している」(同)
下図は一般的なチップビーズとのインピーダンス特性の比較だ。一般的な製品は通電時の磁気飽和によってインピーダンス特性が劣化するが、MLJ1608WGシリーズでは、独自の材料/構造設計によってこの磁気飽和を抑制。通電時も特性劣化が軽微で、「実際の使用環境下において高いフィルター機能を得ることができる」としている。
MLJ1608WGシリーズは、TDKエレクトロニクスファクトリーズ大内工場(秋田県由利本荘市)で既に生産を開始しており、当初は月産1000万個を生産予定。サンプル価格は1個40円(税別)だ。
また、同社は今後、定格電流が700mAや800mA、長期的には1Aを超えるものまで視野に開発を進めていく方針としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ADASで要求増の車載PoC用インダクター、TDKが展示
TDKは「TECHNO-FRONTIER 2022」(2022年7月20〜22日/東京ビッグサイト)に3年ぶりにリアルで出展し、最新の製品群から注目の製品などを展示した。 - 高周波対応の車載PoC用小型ノイズ抑制フィルター
TDKは2020年12月15日、高周波で高いインピーダンスを保持し、通電時のインピーダンスの変動も抑えた車載PoC(Power over Coaxial)用ノイズ抑制フィルター「MDF1005シリーズ」を開発したと発表した。 - 大電流対応の車載PoC用インダクターを開発、TDK
TDKは2021年10月26日、「3225サイズで業界最高水準」(同社)とする大電流対応を実現した車載PoC(Power over Coax)用インダクター「ADL3225VMシリーズ」を開発し、量産を開始したと発表した。独自の構造設計によって、1M〜1000MHzの広帯域で高いインピーダンス特性も実現。「PoC用インダクターに求められる要素を高いレベルで満足した製品で、PoCの大電流化に貢献する」としている。 - 2組の正弦/余弦出力で冗長性を確保、TMR角度センサー
TDKは2022年7月14日、冗長性を備えた小型アナログTMR角度センサー「TAS4240」を開発したと発表した。従来品と同等の精度、特性を有しながら従来比約2分の1小型化をしており、低コスト/低消費電力も実現。電気自動車(EV)市場を中心に展開していく。 - 低静電容量、狭公差の車載イーサネット向け高ESD耐量バリスタ
TDKは2022年3月22日、小型、低静電容量および狭公差の車載イーサネット向け高ESD(静電気放電)耐量チップバリスタ「AVRH10C101KT4R7YA8」を開発したと発表した。ESD耐量は2万5000Vの高耐圧で、静電容量範囲は4.7±0.57pFという狭公差を実現。OPEN Allianceの、車載イーサネット100BASE-T1向けESD保護部品の規格に準拠している。 - 低抵抗の樹脂電極タイプMLCCを独自構造で実現、TDK
TDKは2021年9月14日、樹脂電極品ながら端子抵抗を通常電極品と同レベルに抑えた積層セラミックコンデンサー(MLCC)「CNシリーズ」の新製品を開発した、と発表した。新たにラインアップに加わったのは、3216サイズで静電容量値10μFと3225サイズで22μFの2製品で、同月から量産を開始した。